Nikon(ニコン)のAPS-Cサイズセンサー(DXフォーマット)の一眼レフカメラ用高倍率ズームレンズ AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G ED VR IIの実写レビューです。
高倍率ズームは身軽に動きたいスナップや旅行での撮影から、レンズ交換の手間を省きたい取材や記録用途まで、様々な場面で使いやすい便利なレンズです。
実写レビューでは、マウントアダプターFTZを使って、人気のAPS-Cサイズセンサーのミラーレス一眼カメラZ50に装着してテストしました。現時点(2021.4.9現在)でAPS-Cサイズセンサー用のZマウントの高倍率ズームは存在しない為、Z50用のレンズとしても価値ある一本と言えるでしょう。
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特徴/操作性
2009年に登場したNikon (ニコン) AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G ED VR II は、デジタル一眼レフのDXフォーマット(APS-Cサイズ)に対応した、35mm判換算で約27mmから300mmまでをカバーする高倍率ズームレンズです。
品名にIIと付くとおり旧モデルが存在しますが、基本的なデザインやレンズ構成は同じで、コーティングの改良による画質向上と、持ち運び中にズームリングが自然に伸びてしまうのを防止するズームロックスイッチが追加されたのが改良点です。
I型を含めれば15年以上販売さているベストセラーレンズと言えます。
ズームリングの動きは適度な重みがあり、今回の撮影ではズームがずり落ちて来ることも無く、ズームロックスイッチの有効性はあまり感じられませんでした。
このクラスの一眼レフ用高倍率ズームとしては珍しく、オートフォーカスの状態でもフォーカスリングを操作出来るフルタイムマニュアルフォーカスに対応しており、メーカー純正らしい手の込んだ作りとなっています。
ピント位置の微調整や、暗所等でピントが合いづらい場面でもモード切り替え無しで速やかにマニュアルフォーカス出来る機構は、撮影条件が多岐にわたる高倍率ズームでは便利な機能だと思います。
現在の使い方を考えて、テストカメラにはミラーレス一眼カメラNikon (ニコン) Z50を選択しました。
ミラーレス一眼カメラなので、取り付けにマウントアダプターが必要な分、少々仰々しい見た目となり、レンズのコンパクトさが犠牲になるのが少し残念です。しかし、フォールディングという意味では、Z50はグリップが深く人差し指が当たる部分の盛り上がりの形状も良いので、バランス良くしっかりと握る事ができます。
撮影中はハンドストラップを付けて常時片手で持ち歩きましたが、重量から来る取り回しの悪さや疲労感といった、ネガティブな要素を感じる事無く過ごせました。
フィルター径
72mm
最短撮影距離
0.5m(ズーム全域)
最小絞り
f/22(18mm)-f/36(200mm時)
絞り羽根
7枚(円形絞り)
長さ
96.5mm
重量
約565g
実写レビュー
前述の通り、ボディはNikon(ニコン)Z50に純正マウントアダプターFTZを組み合わせて撮影しました。カメラの設定は、ピクチャーコントロール:スタンダード、ホワイトバランス:オート、各種レンズ補正はオフです。
作例1:f5.6 1/160 ISO160 露出補正±0 焦点距離95mm
作例2:f7.1 1/1250 ISO100 露出補正±0 焦点距離170mm
作例3:f7.1 1/400 ISO100 露出補正±0 焦点距離50mm
ボケの大きさやシャープな解像感はさすがに単焦点レンズにはかないませんが、近くの物でも遠くの物でも、目についた物はなんでも気軽に撮れるのが高倍率ズームを使った街歩きスナップの楽しさです。
例えば同じ場面、同じ立ち位置でも、ワイド側で遠近感を強調したり、逆にちょっと長めにして望遠の圧縮効果を作画に活かしたりといった事を、レンズの交換無しで即座にできるのも強みの一つです。
Nikon (ニコン) AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G ED VR II の最短撮影距離はズーム全域で0.5mとなっており、簡易マクロ的な使い方が出来るのもポイントです。
作例4:f8 1/400 ISO100 露出補正±0 焦点距離29mm
作例5:f8 1/250 ISO100 露出補正+0.7 焦点距離56mm
作例6:f8 1/320 ISO140 露出補正±0 焦点距離200mm
作例7:f6.3 1/80 ISO100 露出補正±0 焦点距離32mm
各種レンズ補正をオフにしていた事もあり、被写体によってはレンズのゆがみが目立つ場面もありました。しかし、マウントアダプターFTZとZ50の組み合わせではボディ側の自動ゆがみ補正を使用できるので、気になるようならONにして使うといいと思います。
AFは日中の明るい条件下ではおおむね問題無く動作しました。しかし、暗い場所やメリハリの無い平板な被写体に対してはなかなかピントが合わない事もあり、AFエリアモードをピンポイントにしたりマニュアルにしたりと、マウントアダプターを使うデメリットが顔を覗かせます。
純正品とは言え、本来一眼レフ用のレンズをマウントアダプター経由で動作させているという事で、動作の安定感、スムーズさにおいてZマウントのレンズに一歩譲るのは致し方ないところでしょう。
画角変化
約11倍の高倍率ズームの能力を見てみます。立ち位置はそのままで、ズームでどのくらい写る範囲が変わるか確認します。
作例8:f8 1/500 ISO100 露出補正±0 焦点距離18mm
作例9:f8 1/500 ISO100 露出補正±0 焦点距離50mm
作例10:f8 1/400 ISO100 露出補正±0 焦点距離200mm
作例8(広角側)と作例10(望遠側)を見比べてみると、200mm(35mm判換算300mm相当)でもかなり大きく写せる事がわかります。
現在では18-300(約16.7倍)や、メーカーによってはそれを超える高倍率ズームが存在し、AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G ED VR II のようなレンズは時代遅れのような気もしますが、実際にズームした際の画角の変化を見てみると、通常はこれで必要十分に思えます。
画質
I型の発売からだと15年以上、今回実写レビューに使ったII型でも発売から10年以上経過したレンズです。最新型のミラーレス一眼カメラに装着してどのくらい性能が出ているか、拡大して解像感を見てみます。
枠内を拡大
F8まで絞って撮影した画像ですが、周辺部に向かって解像感が落ち、眠くなっていくのが分かります(画面右端より左端の方が画質が甘い)。
ここ10年ほどのレンズ性能の進歩には目を見張るものがありすが、流石に15年以上前のレンズは最近の製品と比べて性能的に劣るのは致し方ないと言えるかもしれません。
今回の実写レビューではOFFにして使いましたが、カメラ側の補正機能を積極的に使用した上で、シャープネスのパラメーターも調整してみても良いかなと感じました。
まとめ
シャッターチャンス重視で撮影したい場面では大活躍が期待できる1本です。
Zマウントの高倍率ズームには、フルサイズ対応のNIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VRがあり、最新世代だけあってとても高性能です。しかしDXフォーマットのカメラで使うと35mm判換算で36-300mm相当となり、高倍率ズームとしては広角側がやや物足りなくなってしまいます。
Nikon(ニコン) AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G ED VR II は、設計が古い事もあり性能的にはやや物足りない部分もありますが、価格がリーズナブルという事もあり、マウントアダプターを使うメリットも小さくありません。
ZマウントのAPS-Cサイズセンサー向け高倍率ズームの登場を願いつつ、それまでのつなぎという意味でも価値あるレンズだと思います。
Photo & Text by フジヤカメラ 浅葉