Xマウント用の望遠ズームレンズ、FUJIFILM(富士フイルム) フジノンレンズ XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR の実写レビューです。
システムの中で何となく空白地帯となってしまっていた、コンパクトで高性能な望遠ズームが待望の発売となりました。
35mm判換算で450mmまでとなる超望遠レンズを実写レビューを中心に紹介します。
FUJIFILM(富士フイルム) フジノンレンズ XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR は、フィルター径67mm、全長132.5mm(W端)、重量580gと、スリムでコンパクトな望遠ズームレンズです。
今回はテスト撮影に動体を予定していたので、カメラはハイエンド機のX-T4を選びましたが、カメラが大きく見える程です。
それでいて全体の作りはしっかりとした高級感のあるもので、ハードな使用にも安心して使えそうです。最近のこのクラスの望遠ズームレンズには、性能的に高いレベルのものが多いので、テスト撮影が楽しみです。
ズームやフォーカスリングの動きは滑らかで、他のFUJIFILM(富士フイルム)Xマウントのレンズと共通するものです。
古いXマウントのレンズには、オートフォーカスがうるさかったりガクつく物もありますが、XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR のオートフォーカスは、リニアモーター駆動により非常に高速でスムーズです。インナーフォーカス方式を採用しているので、ピントによる全長の変化もありません。
使い易いコントロールリングとズームロックを備えています。
野外での使用が多い望遠ズームらしく、WR(防塵防滴)仕様となっており、急な雨やほこりっぽい環境下でもシャッターチャンスを逃す事はありません。
付属のフードは大型でしっかりしたものなので、フレアなどの発生を抑える効果は勿論、レンズを衝撃などから守るプロテクションの効果も期待出来ます。
フィルター径 | 67mm | 最短撮影距離/最大撮影倍率 | 0.83m/0.33倍(T端) |
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最小絞り | F22 | 絞り羽根 | 9枚 |
長さ | 132.5mm(W端) | 重量 | 580g |
35mm判換算で450mmまでとなるズームレンズは、超望遠レンズと言って差支えないと思います。
少しネガティブな事ですが個人的に、FUJIFILM(富士フイルム)というメーカーのカメラに超望遠レンズを使うというイメージがあまりありませんでした。勿論、400mmまでのズームレンズがラインナップされていますから、製品としては超望遠レンズはあるのですが、イメージとして超望遠レンズを使うメーカーというイメージが薄かったのです。
今回のXF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WRのテスト撮影は、そんなイメージを覆すものになりました。
再び個人的なイメージなのですが、超望遠レンズを頻繁に使う被写体と言えば先ず鉄道が思い浮かびます。
作例1のあずさのように、高速で移動する列車を、超望遠レンズで動体予測を使って撮る方法は、鉄道写真ではよく見る手法です。今回テストボディとして用意したFUJIFILM(富士フイルム)X-T4とXF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WRの組み合わせは、非常にレスポンスが良く、フォーカスを心配する必要は殆どありません。
作例2では、丁度上下線がすれ違うタイミングに気付き慌ててカメラを構えましたが、超望遠でも瞬時に精密にピントが合うレンズのおかげで、シャッターチャンスをものに出来ました。
鉄道と並んで超望遠レンズを使う代表的な被写体に野鳥が挙げられると思います。野生動物に気付かれないように、自然な表情を撮影するには超望遠レンズが必須です。
今回XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WRを使って初めて野鳥撮影にチャレンジしました。非常にスリムでコンパクトなレンズとカメラの組み合わせは、足場の悪い場所を長時間アクディブに動かなければならない野鳥撮影には、非常に使い易いと感じました。
正直に言うと35mm判換算450mmまでのレンズは、野鳥撮影では少し焦点距離が足りないと感じたので、後述するテレコンバーターとの併用がベターだと思います。
河原の小道を被写体を探しているとサギが飛び立ったのに気付きました。
素早くカメラを構えて被写体にレンズを向けます。レスポンスが悪かったり性能の悪いオートフォーカスだとこの瞬間は逃してしまったと思いますが、初めて野鳥撮影にチャレンジした割には上手くシャッターチャンスをものに出来たと思います。
動く被写体にどのくらいの精度でフォーカスが合っているか拡大して確認してみましょう。
バッチリピントも合っていました。解像感も非常に高く高性能です。
FUJIFILM(富士フイルム) XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR の、コンパクト故の取り回しの良さと、高速で精度の高いオートフォーカスに助けられました。
(少し露出がアンダーなのはそこまで手が回らなかったからで、撮影者の腕前によるものです)
すずめは小さな鳥ですが、比較的近くまで寄って来るので450mm(35mm判換算)でもそこそこの大きさに撮れます。冬の光を浴びた姿がどこか寂し気に感じて、素早くシャッターを切りました。
実は先の鉄道写真を撮っている際にホームから撮った写真ですが、いつでも肩からぶら下げておける大きさ重さのレンズは、こんなちょっとした瞬間を写しとるにはピッタリです。
XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WRの最短撮影距離は0.83mで、テレ端での撮影倍率は0.33倍とややマクロに弱いFUJIFILM(富士フイルム)のレンズの中で群を抜いて優秀です。
手の届かなような場所にある梅の花も望遠マクロ的に引き寄せて撮る事が出来ました。白い花の色が引き立つよう、望遠レンズの圧縮効果を利用して背景が黒くなるように撮影しました。
FUJIFILM(富士フイルム) XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR の特徴の一つに、テレコンバーターを使用出来る事があげられます。
以下は2倍のテレコンバーターを装着しての実写レビューです。
2倍のテレコンバーターを装着した際のテレ端の実焦点距離は600mm、35mm判換算で約900mmになります。
普段見慣れた総武線が、強力な圧縮効果でどこか非日常的な風景として撮れました。撮影した日がたまたま温かい日だった為、陽炎が立っていたのも写真に雰囲気が出て良かったと思います。
遠く新宿の街並みが、不自然な程大きく写るのも900mmという超望遠レンズならではの効果です。
ビルの窓を鏡に見立ててアナウンス中の駅員さんを撮りました。
この程度の撮影であればテレコンバーターの装着によるオートフォーカスの性能低下は殆ど感じませんでした。マスターレンズのF値より2段階暗いF11での撮影ですので、テストボディのX-T4の性能の高さも含めて優秀と言えるでしょう。
以前で有れば性能の低下やオートフォーカスが出来ないなどのデメリットを覚悟しながら使わなければならなかったテレコンバーターですが、技術的に相当な部分が克服出来て、便利になったと思います。ミラーレス一眼と像面位相差の登場で、オートフォーカスがF値の暗いレンズでも使えるようになった事もメリットとしては大きいと思います。
以前はこういったF値の変化する望遠ズームは廉価版であるケースが多く、性能は大口径レンズに大きく劣るケースが多かったと思いますが、最近のこのクラスのレンズはカメラの高性能化もあって驚くほど高性能なケースが多くなってきました。
FUJIFILM(富士フイルム) XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WRについてもそういった高性能なタイプのレンズで、大きさからは想像出来ないシャープさを持っています。
拡大して画質を見てみたいと思います。
すずめの柔らかな羽毛の様子が詳細に再現されていてシャープです。
大伸ばしやトリミングにも十分耐える画質で、コンパクトなズームレンズの画質とは思えません。利便性と性能のバランスがとてもいい使い易いレンズだと思います。
次に、2倍のテレコンバーターを装着した際の画質を見てみます。
作例写真に激しく陽炎が出てしまっており、レンズの性能を正確に把握をするのは難しいという結果でした。申し訳ありません。
この写真から正確な評価をするのは難しいですが、運転士さんの顔や眼鏡が判別出来るので、少し眠いけれど悪くは無いくらいに感じます。
又、2倍テレコンバーター装着時には、開放F値が11とかなり暗くなる為、条件が良くてもISO感度は640とやや高くなってしまったのも、画質低下の原因になっていると思います。
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Photo & Text by フジヤカメラ 北原