めったに入荷しないレンズが入荷しました。LEICAの「NOCTILUX 50mm F1.2」です。
どんな写りなのか?めったに入荷しないレンズなので、中野駅周辺で実写してみました。
付属していた取説のコピーには「あるままの弱光下で写す非球面・超高速レンズ」とあります。
ISO51200といった、フィルム時代には考えられなかったような、高感度特性を持ったデジタルカメラが多数存在する中、「超高速レンズ」という言い回しに、時代の空気が感じられます。
f1.4と1.2、わずか半段の露出の差が、撮れるかとれないかを分けた時代を感じつつ、文字通り「弱光下」の中野の夜を散歩しつつテスト撮影を行いました。
かなり高額なレンズなので、ちょっと緊張しながらのテストです。
テストボディは常用最高感度51200のSONY α7III、マウントアダプターには焦点工房のヘリコイドリング付きアダプター「LM-SE M」を使用しました。
絞りは勿論全てのカットで開放f1.2を使いました。
アダプターの接写機能を使って、本来レンズの持っている能力以上の接写撮影を行ってみました。
f1.2開放での撮影という事もあって、まるでソフトフォーカスレンズで撮ったような、柔らかい表現となりました。
本来この距離で撮影する事を念頭いおいて設計されていませんし、お世辞にもコンディションのいいレンズとは言えないので、これがこのレンズの性能ではないと思いますが、ピント部分もかなり柔らかく、オールドレンズらしい写りになっています。
最新のデジタルカメラで撮影していますが、どこか古くさい、フィルムライクな写りになります。
古いレンズらしく、コントラストは低め、たる型の歪曲収差が顕著で、周辺光量の低下も認められます。
中野駅周辺は、飲食店が多く、ちょうどにぎわい始める時間で、食べ物のいい匂いがあたりに漂って来ました。
もの凄く寒い日でもあり、どこかのバーにでも入って、カメラ片手に一杯やりた気分になりましたが、まだ勤務時間中だった為、がまんがまん。
車が買える値段のレンズです。うっかりレンズにウィスキーをかけてしまったりしたら、怒られるではすみませんからね!
柔らかく美しい光の回り方をするレンズです。
最新鋭のシャープで高性能なレンズを見慣れた目には、逆に新鮮で、レンズの「性能」が数値だけでは表せない、奥深いものである事がわかります。
Mマウントのレンズという事で、近接に弱く、このくらいの撮影倍率でも、マウントアダプターのヘリコイドをわずかですが使いました。
中野の昭和っぽい飲み屋街がさらに昭和っぽく!
中心に向かってなだらかに落ちる周辺光量が美しく、全体的にクラシックな写りになりました。
「超高速レンズ」の明るさと「ボディ内手振れ補正」という現代のテクノロジーのお陰で、手振れ無く撮影出来ました。
若干の2線ボケが見られますが、以前テストした「NIKKOR 5cm f1.1(S用)」と比較すると、ピントの合った部分のシャープさは断然上で、10年程後のレンズとは言え、当時のLEICAの性能の高さがうかがえます。
LEICA NOCTILUX 50mm F1.2 は1966年発売という事なので、50年以上前のレンズという事になります。
写りは確かにオールドレンズのそれですが、思いのほか高性能で、当時のLEICAレンズの水準の高さが垣間見られました。
非常に高額なレンズで、目にする機会も少なく、滅多に出来ない貴重な経験が出来ました。