ニコン高性能レンズの中心といえる存在の1つ。それが70-200mmf2.8です。初代モデルの発売は2003年のことでした。2009年には進化してII型となり、ニコンユーザーの人気を集めてきました。そして先日、このII型から「AF-S NIKKOR 70-200mmf/2.8E FL ED VR」にモデル
チェンジされたのです。今回のオレためは、D750と70-200mmで撮影に行ってきました。
大きめの、ゴールドの箱からケースを取り出し、いよいよご対面です。予備知識をほとんど仕入れていなかったので、レンズを取り出している時の第一印象は「あれ、小さくなった ? 」というものでした。フードもかなり短くなっているようです。前モデルの正式名称は「AF-SNIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II」でしたが、今回の新型はこれに「FL」が加わっています。これはフローライト(蛍石)のこと。レンズの解像性能が高まっただけではなく、マグネシウム合金製部品の採用などと相まって、110gの軽量化を達成しました。小さく見えたのはこれが理由だったのですね。それでも、堂々として頑丈そうな雰囲気はきちんと感じ取れました。
話は逸れますが、来年の干支は酉。そう、トリ年なのです。そこで、鳥さん達を撮ってこようと思い、掛川花鳥園に出かけました。持ったときの安定感が増すので、バッテリーパックのMB-D16も併用しています。さて。この「70-200mm f2.8E FL ED VR」はとにかくAFが速いです。速すぎです。きちんと意識してフォーカスロックをかけないと、勝手に作動して抜けてしまうこともあります。4か所にフォーカスロックが備わっているのも納得でした。レンズ先端側にあるズームリング、マウント側にあるピントリングともかなり軽いのですが、安定感は抜群。手にもよく馴染みますし、とても心地よい操作感でした。ただ、これまでの70-200mmとは逆の位置になっており、また日頃使っているレンズも逆の位置なので、撮影開始直後はけっこう間違えました。ズームしようとするとピントを回すわけですから、まさに苦笑いですね。しかし「ズームは手前 ! 」と意識してからは、ほぼなくなりました。慣れれば問題ありません。
コシベニペリカンといいます。花鳥園に入って真っ先に向かうのがここ。エサの魚を購入して投げ与えることができるのですが、上手にキャッチしてくれるので面白いのです。ただ今回は、ちょうど工事中で販売が休止されていました。トントン音がするため、ペリカンも落ち着かない様子でした。そんな2羽のシーンを。羽を広げたところを撮ってみました。F16まで絞っていますが、さすがはニコンレンズ。大きな画質の劣化もなく良好な描写を見せてくれます。グリーンがとても鮮やかですね。
エミューは大きくて、ちょっと強面のイメージがある鳥です。「エミュー牧場」と呼ばれる大きな運動場で放し飼いされていて、中に入って楽しむことができます。この日は晴れたので、ススキとエミューを一緒に撮りたいと思い、ゆっくりコミュニケーションを取りながらタイミングを作り、チャンスを待って撮影しました。AF-S NIKKOR 70-200mmf/2.8E FL ED VRの最短撮影距離は1.1m。かなり寄れるので助かります。怖い印象もなく、優しい表情が撮れました。
園内では、鳥のすごいところを見られる「バードショー」も開催されています。これはヘビクイワシ。その名の通り、蛇などを食べます。その際は頭に蹴りを入れて弱らせるという特徴があり、それを観察できます。ちなみにこれは、ヘビに見立てた玩具を蹴飛ばすシーン。脚がとても長いことがわかります。70-200mmF2.8Eの早いAF性能があれば、こうした撮影も連写せず1コマ撮りで捉えることも可能です。特に気合いを入れていたわけではなかったので、驚きました。
こちらはユーラシアワシミミズクです。名前は「ひまり」。最初はずっとアップで狙っていたのですが、ちょっと休憩しようと後ろのベンチに腰掛けてふと見てみたら、このシーンに気付きました。大きな緑の葉を帽子代わりに使っているようで、なんとも微笑ましく感じたのです。視野を広げて観察すると、こうしたシーンに気付くことがあります。70-200mmのズームリングは軽いけど、ムラがなくしっかりしています。それは咄嗟のタイミングで画角を変えなければいけない時などに、真価を発揮するものです。表情とこの状況とのギャップが面白いと思いました。
「あ、見たことある !」 という方もいるでしょう。上野動物園などでも飼育されている、ハシビロコウという鳥です。「動かない」ということで一躍人気者になりました。この鳥も、すぐ間近で見ることができます。しかも、檻や網の中ではありません。135mmの画角で、画面いっぱいに横顔を入れることができるのです。半逆光の光線状態で、頭のてっぺんの羽とくちばしの先端が光っています。この状態で何カットか撮影しましたが、露出のバラつきはありませんでした。今回のニコン70-200mmは電磁絞り機構を採用しているので、露出制御も安定性が増しています。
閉園が近くなり、室内に西陽が差し込んできました。ベンガルワシミミズクはこの光を浴びて、とてもカッコいい姿を見せてくれました。光が宿っている右の眼にピントを合わせています。精悍な表情、そしてそれを彩るコントラスト。この描写はとても好きです。耳が立っているので少し警戒気味でしょうか。一見するとカメラ目線のようですが、実際はミミズクから向かってカメラの左斜め上を見ています。「ニコンフローライト」の威力を、大いに感じ取れたシーンでした。
コンテナにちょこんと乗っているのは、キムネチュウハシ。これに気付いた時にはちょっと慌ててしまいました。目元がキラキラ輝いていて、体の黄色に加え、嘴や顔まわりの色あいがとてもキレイだったからです。目元にピントを合わせ、コンテナはそのまますべて入れ込む構図を作りました。ふんわりしたボケが全体に広がり、柔らかな雰囲気を出せたように感じています。
ここからの3カットは風景写真です。静岡県富士宮市の白糸の滝にて。紅葉が進んできたので見に行ってきました。滝と色付いた木々が正確に再現されています。三脚は使用していませんが、手すりなどを効果的に利用すればブレは防ぐことができます。さらに、CIPA規格準拠で4段(NORMALモード時)の手ブレ補正が搭載されているのは、大きな信頼にも繋がりますね。
田貫湖から日没直前の富士山を狙いました。日中は雲に隠れてしまうこともありましたが、午後からハッキリと姿を現し、そのままの姿で日没を迎えました。16時過ぎから少しずつ色がピンク色に変わっていくさまは、実に感動的でした。このカットは16時28分に撮影しています。夕方の遠景という条件でしたが、稜線付近の描写など目を見張るものがありました。ラッキーな条件に恵まれ撮影することができましたが、70-200mmFLを使っていたのはまさに幸運でした。
ここ田貫湖は、水面に富士山が映り込む「逆さ富士」が見られる場所として知られています。太陽が山頂に沈む「ダイヤモンド富士」の頃になると、たくさんのカメラマンが全国から押し寄せ、たいへんな混雑になります。この日は平日ということもあり、訪れていた人は5人でした。撮影時刻は16時35分。カメラを縦横変えて撮影したので、慌ただしくなりました。撮れてよかった。
ニコンD750に装着したところ。大きすぎず小さすぎずのベストバランスです。MB-D16付。
最初から期待していた写りですが、全く期待を損ねることはありませんでした。ピントの合っているところは見事なキレを見せます。それでいて、周囲はきちんとボケてくれる。フローライト搭載による色乗りの良さは、これまでのニコンレンズのイメージをよりドラマチックなも
のに変えてくれました。備えていれば、動いている被写体にも優位な気持ちで立ち向かえるでしょう。様々な撮影シーンで、「持っていて良かった!」という気持ちにさせてくれそうです。
■撮影場所
( 掛川花鳥園 )
( 白糸の滝 )
( 田貫湖 )
※撮影はすべてJpeg、手持ちで行っています。ピクチャーコントロールは風景に設定。
Photo & Text by 高山景司
>>> Nikon (ニコン) AF-S NIKKOR 70-200mmf/2.8E FL ED VR