M型デジタルライカでの最高解像度となる6,000万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用した、Leica(ライカ)M11 モノクロームが登場
ライカのモノクローム撮影専用カメラには不思議な魔力がある
ライカM11 モノクローム 作例
オールドレンズでの撮影
ISO感度200000を試す
ポートレート撮影
ストリートスナップ
街並みの人物のスナップ
都市の夜景
その他の都市風景
驚異的な高画質と、レンズの持ち味を引き出す品位のような力
旧機種ライカM10モノクロームとの比較
まとめ
作例に使用したカメラ
Leica M11 モノクローム
作例に使用したレンズ
Leica ズミルックスM f1.4/50mm ASPH. / ズミクロンM f2/35mm ASPH.
1970 年東京生まれ。早稲田大学第一文学部中退。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。作家活動と共に東京•四谷三丁目にてギャラリー・ニエプスを運営。都市のスナップショットを中心に作品を発表し続けている。国内各地の他、東欧、ロシア、キューバ、中国、香港、パリ、ニューヨークなど世界各地を取材。国内外にて個展、グループ展多数開催。第29回東川賞特別作家賞受賞。第24回林忠彦賞受賞。
2012年、CCDセンサーの初代ライカMモノクロームが登場して以来、この先鋭的なシリーズは一部に熱狂的なファンを得て10年に渡って継続してきた。
かくいう僕自身も、ライカのモノクローム撮影専用カメラに取り憑かれてしまった一人で、初代から始まり、CMOSセンサー搭載の多機能なライカM(Typ246)、贅肉を削ぎ落としたサイズのライカM10モノクロームと買い替えながら使ってきた。
現在愛用のM10モノクロームは、シリーズのひとつの完成形と捉えていたのだが、ライカM11が出て約1年半が過ぎたこのタイミングで、4世代目となるライカM11モノクローム発売のニュースが飛び込んできた。
ライカユーザーならわかってもらえると思うが、新機種が発表になると、期待や好奇心と共に自分の愛機が一気に旧型になった落胆とでやきもきする様な正直、複雑な心境である。
果たして機種替えすべきか、今しばらくライカM10モノクロームで踏ん張るか、ここは実際に手に取って試してみるより他にない。
ライカM11モノクロームを手にしての第一印象は、見た目は拍子抜けするくらい変わらないが、幾分軽くなったことだ。
すでにノーマルのライカM11のブラックモデルから外装が合金になって軽量化されていたので、今更な話題かもしれないが、嬉しい改良だ。これは、ライカのように手と目の延長として使うスナップ機として、大事な要素なのである。
また、これもノーマルのライカM11同様であるが、底蓋を廃してバッテリーが直接交換できるようになったり、USBケーブルで充電可能になったことも、使い勝手として大きな変更と言えよう。
底蓋に対する頑なこだわりも個人的には好きではあったが、機能的にはライカM11方式の方が使いやすいのは言うまでもあるまい。こうした合理化は、賛否両論あると思うが、僕はライカも実用機としてガンガン使うので素直に評価したい。
さて、いざ撮り始めてみると、最新型と言えども使い慣れたM型ライカの感触そのもで、まったく違和感なく撮影に没頭できる。被写体を観察しながらフレームで切り取るレンジファインダーは、直感的なスナップ撮影には最適のシステムであり、それ故にM型ライカが生き残ったことをあらためて実感する。
ところで、ライカMモノクロームを使うとファインダーで見える実像は当然色つきなのにもかかわらず世界をモノクロで見ている感覚になってしまう。人間の意識というのは繊細なもので、普通のデジタルカメラでは、たとえ最初からモノクロ設定で撮っていても、カメラにはカラー情報が記録されていると思うと潜在意識が色を意識してしまうものである。
しかし、モノクローム撮影専用センサーのカメラを使うと、不思議な事に脳内で自然に色の情報をシャットアウトしてモノクロの目、すなわち光と影と質感で世界を感じるようになるのだ。特別な道具でモノクローム世界の扉を開き、色彩のない世界を遊び、旅する。これこそがライカのモノクローム撮影専用カメラを使う最大の理由であり、ライカMモノクロームシリーズの魅力の源泉なのだ。
話がやや情緒的に流れてしまったかもしれない。ここからは、実際の画質の問題に移りたいと思う。
ライカM11モノクローム・エルマーf3.5/50mm
絞りF5.6 ・1/1250秒・ISO125
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オールドレンズとの相性を試してみるため、初期バルナックライカ用のニッケルエルマーf3.5/50mmにアダプターを付けて撮影。
周辺部は流れているが中央部はシャープで、90年前のレンズとしては立派な描写である。60MPのまま撮影したが、特に問題は感じられない。ライカMモノクロームシリーズは、カラーフィルム以前のオールドレンズのポテンシャルを最大限引き出して現代に甦らせる道具としても有用である。
ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF5.6・1/1500秒・ISO400
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ニッケルエルマーとの比較のため、最新のズミルックス M f1.4/50mm ASPH.でも同じシチュエーションで撮影。さすが現代のレンズらしく破綻のない写りであるが、比較したエルマーの健闘も素晴らしい。
ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF16・1/150秒・ISO200000
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF16・1/110秒・ISO200000
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ISO感度を最高設定のISO200000まで上げて撮影してみた。さすがに画質は荒れてノイズが目立つのだが、ザラッとした粒子感がフィルムの粗粒子現像のようで好ましい。あえて、この設定で撮影してノイズを表現に活かすのも良いと思う。
ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF5.6・1/1250秒・ISO125
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF8・1/640秒・ISO125
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF1.4・1/1250秒・ISO1600
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山中にてファッションポートレート撮影。特殊メイクで人間が植物に変容していくイメージで撮ってみた。
ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF1.4・1/1000秒・ISO6400
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宮古島出身の引き語りシンガー久貝巧さん。ライカM11モノクロームは、深みのあるトーンで人物の存在感を浮かび上がらせる。被写体に威圧感を与えずにポートレートを撮るには最高のカメラだ。
ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF1.4・1/800秒・ISO400
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香港人写真家のEtienne Leungさん。目をモチーフとした個性的なタトゥーと、彼女自身の凛とした目の両方にピントが来る様にポージングして撮影した。新型ズミルックス50mmの開放F1.4の柔らかい描写が活きて雰囲気のあるポートレートになった。
ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF1.4・1/3000秒・ISO800
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街角の大道芸人に声をかけ、ポートレートを撮らせてもらう。メタリックな肌や服の質感がよく描写された。目を開いてくれるように頼んだが、開けられない様子なのが残念だったが、ドーランが入って滲みてしまったのかもしれない。
ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF11・1/4000秒・ISO6400
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF11・1/4000秒・ISO6400
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF11・1/1500秒・ISO3200
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF11・1/1500秒・ISO6400
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街角で人物に迫ってストリートスナップ撮影。こうした撮影においてライカの様なレンジファインダーカメラは大変撮りやすい。絞り込んでの置きピンで一瞬のシャッターチャンスを狙うのが、伝統的なスナップ撮影のテクニックだ。
ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF8・1/500秒・ISO800
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF5.6・1/1600秒・ISO800
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF8・1/800秒・ISO800
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF8・1/500秒・ISO800
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引いた距離感で、街と人物の双方を写し込んだストリートスナップ。こうした距離では、漠然とした光景にならない様に、人物の配置や動きによく目を配ってシャッターを押すのが大切だ。
ライカM11モノクローム・ズミルクロンM35mm F2 ASPH.
絞りF2・1/250秒・ISO6400
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF5.6・1/125秒・ISO6400
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF2.8・1/180秒・ISO6400
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF4・1/500秒・ISO6400
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都市の夜景を撮影。シャドー部が潰れすぎずに微妙な階調が残って、柔らかい雰囲気の夜景となった。
ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF8・1/2000秒・ISO1600
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF2.8・1/1250秒・ISO125
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF5.6・1/3000秒・ISO800
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF8・1/1600秒・ISO400
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF1.4・1/4000秒・ISO3200
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF8・1/500秒・ISO125
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF8・1/200秒・ISO125
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF8・1/250秒・ISO400
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF11・1/1250秒・ISO400
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こうした街の断片やランドスケープの撮影はライカMモノクロームシリーズの独断場と言える。高解像のモノクロ描写で、街のディテイールがリアルに立ち上がってくる。このカメラを持つと、見慣れた街の断片が、光と影のオブジェの様な存在感で見えてくるのだ。これがライカMモノクロームの魔力だと思う。
カラーフィルターを廃して、センサーにダイレクトに光を感知させることで、輝度分布に忠実な解像感溢れる画像を得られるのが、モノクロ専用機の実際的なメリットである。
ライカM11モノクロームが叩き出す画は当然のごとく驚異的に緻密な高画質であり、拡大して見ても文句のつけようがない。繊細で階調豊かな画作りは単に高解像というだけではなく、レンズの持ち味を引き出す品位のような力を感じさせる。
とは言え、よほどの大伸ばしや拡大再生する事情でもなければ60MPもの高画質を本当に必要とする人はそう多くはないだろう。そうした意味では、画質的にはこれまでの機種でも十分以上のクオリティなのだが、常に最先端のテクノロジーが表現に反映されるのが写真という表現の歴史である。
例えば、6000万画素もの高画質であれば、大幅なトリミングで一部を切り出しても十分に画質を保てることも大きなアドバンテージと言える。ライカM型デジタルとして初めてのクロップ機能も搭載されているのも、余裕を持った高画素を有効活用するための手段のひとつだと考えられる。
こうした点ひとつを見ても、やはり現時点の技術的な到達点の機材を使うことは、様々な撮影の可能性を広げることに繋がると言えるだろう。
ライカM10モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF11・1/1250秒・ISO400
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ライカM11モノクローム・ズミルックス M f1.4/50mm ASPH.
絞りF8・1/1250秒・ISO125
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新旧Mモノクロームで同じ風景を撮って比較してみた。一見してライカM10モノクロームの方がややメリハリの効いたシャープな描写に感じる。ライカM11モノクロームの方は柔らかい印象であるが眠さは感じず、仔細に見ると凝縮した解像感の高さに驚かされる。
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Photo & Text by 中藤毅彦(なかふじ・たけひこ)