はじめに
その安定感から愛用者も多い定番レンズ
ズミクロンSL f2/35mm ASPH.の登場
特徴をチェック
外観・サイズ
性能
まとめ
ズミクロンSL f2/35mm ASPH. 作例
作例に使用したレンズ
Leica 11192 ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
作例に使用したカメラ
Leica 10880 SL2-S
東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年に写真展を開催後、写真家になる。カメラ専門誌、WEBでの撮影や執筆、各種撮影や写真講師等で活動。作品では、国内や海外の街を撮影している。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。デジタルカメラグランプリ(DGP)審査員。NHK文化センター柏教室講師。
ホームページ:
https://fujiitomohiro.amebaownd.com/
Instagram:
https://www.instagram.com/fujiitomohiro/
Twitter:
https://twitter.com/FujiiTomohiro
50mmと並んでライカの代表的な焦点距離と言えば35mmだ。50mmより画角が広く、28mmほど遠近感が誇張されないので扱いやすく、スナップやドキュメンタリーでは定番のレンズとされてきた。ライカは1930年に初めてレンズ交換を可能にしたライカC型から35mmを製造してきた。まさに伝統の焦点距離なのだ。
その35mmの中で、さらに定番とされてきたのが開放値F2のズミクロンだ。ライカではもうひとつ有名な35mmとして、ライカMシステムでF1.4のズミルックスもある。
しかし非球面レンズを使用するまでのズミルックス35mmはコンパクトなものの、絞り開放と絞り込んだときの描写に違いがあり、好みの分かれるレンズだった。それに対しズミクロンは絞りを開けても絞っても安定した描写性能を発揮し、ライカの35mmの中でも愛用する人が多かった。
現代のズミクロンでは、アポ・ズミクロンを思い浮かべる人も多いだろう。絞り開放から極めて高い解像力を持ち、4000万画素を超える機種でも余裕で対応する。
しかし解像力は十分ありつつ、柔らかさも持った描写力が好みの人もいるはず。またアポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.はやや大柄で重さも750gもある。そこへ登場したのが、今回のズミクロンSL f2/35mm ASPH.だ。
50mmと共通の外観。非常にシンプルだ。しかしマウント付近のデザインはかつてのライカRレンズを思わせ、重厚感のある仕上がりはライカであることを感じさせる。
ズミクロンSL f2/35mm ASPH.は、同時に登場した50mmとほぼ同じ外観を持つ。大きさも370gの重さも同じだ。アポ・ズミクロンSLシリーズも焦点距離が変わっても同じ外観を持つのに近い。
これはズミクロンSLの50mmと35mmで同じ使用感の写真撮影ができるだけでなく、動画撮影時にも同じセッティングで撮影できるメリットもある。特にリグを組んだり、ジンバルに装着して撮影する際に便利だ。ミラーレスカメラは今や動画機能も重要なので、こうした配慮は嬉しい。
驚くほど小さい、というほどではないが、F2の明るさを持つフルサイズ対応の広角レンズとしてはコンパクトだ。重量級に見えるが、手に取ると想像以上に軽い。
フィルター径も50mmと同じ67mm。
こちらも50mmと共通のレンズフード。花弁型で装着すると鏡筒と一体感があり、よりスタイリッシュになる印象だ。
改めて外観を見ると、ライカSLレンズの中ではコンパクト。使用したライカSL2-Sとのバランスもいい。また質感の高い鏡筒もさすがライカ。マットな仕上がりは重厚感があり、所有する満足感が得られる。またピントリングのゴムも滑りにくく、MFの際もスムーズなフォーカシングが可能だ。
AFには新開発のリニアダイレクトドライブ方式を採用。これも同50mmと同じ仕様だ。静かで滑らかに駆動する。静かな場所でもAF駆動音を気にせず撮影できるのはもちろん、動画撮影も考慮していることがうかがえる。
レンズ構成は9群11枚。そのうち3枚の非球面レンズと、3枚の異常部分分散ガラスが使用されている。描写は絞り開放から解像力が高い。しかしアポ・ズミクロンのエッジが立つようなシャープさとは異なり、優しい雰囲気を持つ写りだ。
ズミクロンSL f2/50mm ASPH.の描写傾向と共通なので、両方を同時に使用しても統一された仕上がりが得られる。また絞り開放では画面四隅がわずかに甘くなる程度で周辺光量低下も気にならず、非常に優れた描写力だ。
絞ると尖鋭度は増すものの、こちらも絞り開放から雰囲気は変わらない。かつてのライカMレンズの「ズミクロンは絞りを開けても絞っても安定している」という写りを継承した印象だ。伝統的なライカらしさが味わえる。
最短撮影距離が0.24mと短いことも特筆だ。近距離でも描写性能が落ちないところも、安定した性能を誇るズミクロンらしい。そして逆光でもフレアやゴーストは出にくかった。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF5.6・1/125秒・−0.7EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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風が吹いて店先のシートが揺れた瞬間を狙った。AFは静かで速く、快適なスナップが楽しめた。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF2開放・1/400秒・−0.7EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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絞り開放。背景は自然なボケ味が得られた。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF2.8・1/125秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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ピントを合わせたカゴを見ると、解像力がとても高いことがわかる。しかし硬すぎず、肉眼の印象に近い写真が撮れた。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF2.8・1/125秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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35mmは街中で撮りたいシーンに出会ったとき、極端な遠近感をつけない、自然な写真が撮れる。解像力もボケ味も優れていて、立体感のある仕上がりだ。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF5.6・1/800秒・+0.3EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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左斜め上から太陽の光が来ているが、コントラストが下がらず、メリハリのある描写だ。建物の壁もシャープに再現された。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF2.8・1/250秒・−0.3EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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最短撮影距離が0.24mと短いため、思い切って寄ることができる。表現力の幅が広いレンズだ。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF2開放・1/500秒・+0.3EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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50mmより画角が広い35mmは、近接撮影するとわずかに遠近感が強調され、広角レンズらしい表現が可能だ。絞り開放でも描写は甘くならない。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF2.8・1/50秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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服の布地、ベルト、バックルの質感が非常にリアルだ。描写力の高いレンズなのがわかる。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF2開放・1/640秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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絞り開放でも周辺光量低下はほとんど感じられない。草も十分シャープだ。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF2開放・1/1000秒・−0.3EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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描写力に優れ、最短撮影距離も短く、とても使いやすいレンズだ。何気ないスナップも楽しく撮影できた。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF2開放・1/3200秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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F2のボケを生かしたスナップを狙った。ここでも素直なボケ味と、周辺光量低下の少なさが伝わる写真になった。
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Photo & Text by 藤井智弘(ふじい・ともひろ)