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2024.05.01
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Leica SL レビュー × 石井 靖久|Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.を携えて、中東の旅

Leica SL レビュー × 石井 靖久|Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.を携えて、中東の旅キービジュアル


ライター石井靖久 (いしい・やすひさ)イメージ
■フォトグラファー紹介

石井靖久 (いしい・やすひさ)

1980年生まれ、医師・写真家。
2018年、染色という医学的手法を用いて写真を再考察した写真集「Staining」を出版。翌年に医学で構成された脳が紡ぎ出した自然写真群「細胞の海、神経の森」を発表しLeicaギャラリー東京で写真展、および写真集出版。「△(2021)」「Spectrum of you(2022)」、その他国内外で写真展など多数。医師と写真家に共通する「みる」という行為の葛藤を考察すべく、視覚と脳の関係を軸にした表現で作品制作を行う。
Instagram:@yasuhisaishii_tokyo
Website:http://www.yasuhisaishii.tokyo/

はじめに

2015年があと数日で終わろうとしているある日、年始から予定していた中東への旅の直前に発売されたばかりのLeica SLをLeica銀座店で受け取った。使い慣れていないボディを旅の直前に手にしてそのまま旅に出るというやや乱暴な行いだが、その目的はLeica SLの大きなEVFとISO50だった。

Leicaを使うようになってからようやく手に入れた憧れのLeica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.だったが、その大きさと極薄ピントのおかげでM型に装着して旅をする気になれずにいた。手放すか、という考えを実行に移す前に今一度このレンズと対峙するためにLeica SLを選んだというのが、新しい機材を買った言い訳だ。

案の定ろくに触れないまま出発の日になり、飛行機内でLeica SLをポチポチと設定。ON / OFFの記載しかなくほぼ真っ黒な背面デザインはソリッドで格好いい。ボタンの機能は液晶に表示されるのでさほど困ることはない。Leica SL(初代)とLeica M モノクローム 2台(CCD・Typ246)という組み合わせの旅は、まず初めてのボディを機内で触ってみるというところから始まった。

Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.との相性は抜群

先に結論を述べるが、この旅でLeica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.は良い意味で強烈だった。Leica SLのEVFは素晴らしく、Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.との相性は抜群である。さらにLeicaの2400万画素という個人的に好きなセンサーの描写は、カラーでもモノクロームでも非常に懐が深く、同時に現像でも扱いやすい。オマーンでは約2800枚撮影し、そのうちLeica SLはなんと1300枚。初めての機材で半分近く撮ったのだからこの結論に嘘はない。

Leica SL 本体:正面から見た画像
Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.

SLシリーズの中でも優れたデザインだと個人的には思う。
現行Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.を装着、ビジュアル的にも非常に良いバランス。

Leica SL 本体:上部から見た画像

MレンズはできればM型で使いたい、というのはLeica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.においては別。

Leica SL 本体:背面から見た画像

潔い背面デザイン、これくらいソリッドなのが好み。

公式で掲載されたシリーズはLeica SLとLeica M モノクロームによる全編モノクロ作品だが、こちらではスピンオフという位置付けでLeica SLによるカラー作品を掲載する。2015-2016年頃は自分にとって初期作という位置付けであり、2019年頃から始まる現在の医師・写真家としての作風に至る前の、言わば無意識を探る時期に撮られた写真群。自分でこの頃のアーカイブを振り返ったのも久しぶりだった。

Leica SL 作例:上空から見た中東の国

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞り F0.95・1/1500秒・ISO 50・DNG

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砂色の世界。これから異国に降り立つのだと思うと当然気持ちが昂るが、それは同時に眼も脳も曇ることを意味する。

Leica SL 作例:電球

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞り F0.95 ・1/30秒・ISO140・DNG

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アラビアの城、ニズワフォートでまずは機材と視座の一致度を感覚的に試す。ホールドはしやすく、シャッターフィーリングも静かで心地良い。EVFは極めて視界良好であり、拡大してピントが合っていたらF0.95だろうが確実にピントを捉えている。そしてこの青の色味はM9に近い。やはりLeicaの2400万画素センサーはいい。

Leica SL 作例:鏡に映る人物

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞り F0.95 ・1/180秒・ISO50・DNG

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城内にある得体の知れない染みや汚れのついた鏡、覗き込むのは少しだけ怖い。この1 枚でLeica SLは行けるなと感じた、なんとなく。

Leica SL 作例:窓からの採光

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF0.95・1/90秒・ISO50・DNG

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フォート内は結構暗い。小さな灯りと採光が複雑で印象的な陰影をもたらしてくれる。これだけ表現してくれると頼もしい。

Leica SL 作例:人物

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF0.95・1/500秒・ISO50・DNG

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LeicaカメラAGのノクティルックス50周年の公式作例にも選ばれた1枚。オールドだともっと個性的なボケになるだろうが、現行は極めてクリーン。

Leica SL 作例:渓谷

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF1.4・1/1000秒・ISO50・DNG

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首都マスカットからワヒバ砂漠に向けて南下すると景色が変わる。渓谷における現地の日常。もっと絞って撮ればいいものを、Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.だとそれが心理的に難しい。

Leica SL 作例:中東の港町

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF0.95・1/1000秒・ISO50・DNG

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途中で立ち寄った静かな港町。何気ないスナップは旅の醍醐味。自分のアーカイブにはこういう普通のスナップと、抽象的な写真が混在しているのが特徴。

Leica SL 作例:中東の海

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF0.95・1/1000秒・ISO50・DNG

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小高い丘の上から。この国は砂漠もあるが海にも面している。穏やかな人が多い一方、イエメンと接していたりホルムズ海峡も有しているなど、地政学的に意味のある国でもある。

中東の光を朝から夕まで美しく描き切ってくれた

前年のアイスランドでの作品をモノクロームで制作したのもあり、この旅もその流れを汲みモノクローム現像を前提としていた。そのためカラー機は思い切ってLeica SLのみに委ねてみたのだが、後悔ゼロ。むしろEVF越しに見るLeica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.の世界はあまりにも美しく、ISO50で可能になる開放での撮影と、その開放でもピントが面白いように来るという事実は本当に驚いた。

この組み合わせは中東の光を朝から夕まで美しく描き切ってくれた。この時から僕の中でLeica SLはLeica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.専用機になるのだが、それはボディとレンズのバランスの良さも影響している。M型に装着するとどうしても重心が悪く心地悪いが、Leica SLだと絶妙なサイズ感とホールドのしやすさで不思議と重さを感じにくくなる。

ルックスはM型には敵わないが、Leica SLでの組み合わせを体験するとLeica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.の真価を発揮させるボディはこれが答えだと感じる。F1.2やF1.0時代のノクティルックスであれば気分的にはM型で使いたくなるが、しかし伝統的なM型レンズをLeica SLという新しいフォーマットで次世代に紡いでいくというLeicaの覚悟的で前向きな考えも非常にいいと思う。

Leica SL 作例:車内から見た砂漠

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF2・1/1000秒・ISO50・DNG

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砂漠の入り口でSUVのタイヤの空気を抜き、いよいよ砂漠へ。街中のみならず車内でもクルアーン(コーラン)が流れる。

Leica SL 作例:砂丘

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF5.6・1/750秒・ISO50・DNG

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Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.は絞って撮れば非常に端正に写る。砂丘の陰影も、あらゆる構造物の立体感も、描写の次元が高い。開放の異世界感とのドラスティックなギャップがこのレンズの魔性な部分。

Leica SL 作例:砂漠の夕日

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF0.95・1/3000秒・ISO50・DNG

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そろそろ陽が沈むぞ、砂漠の夕陽は格別だ、とドライバーが言い砂丘の上で車を停める。砂漠に降り立ち、彼は少し遠くへ離れていく。夕焼けをそれぞれの空間で静かに楽しもうということだろう。今夜は砂漠に泊まる。

Leica SL 作例:砂漠と霧

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF1.7・1/30秒・ISO50・DNG

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夜明け少し前に起きて誰もいない砂漠を歩く。夜明けと共にどこからともなく霧が現れた。まさか砂漠で霧に包まれるとは。砂漠の朝は色が薄い。

Leica SL 作例:ラクダ

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF0.95・1/2000秒・ISO50・DNG

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ラクダを見るとMERSがよぎる。職業が邪魔をする。これも個性だ。

Leica SL 作例:海辺の夕焼け

Leica SL+Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.・絞りF1.4・1/750秒・ISO50・DNG

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砂漠を後にし再び首都へ。異国で見る夕焼けはいつも初めて見る色のように感じる。脳の仕業だろう。どこにいても流れ聴こえてくるクルアーンがさらに視覚を補強する。中東の光、兎に角美しかった。

終わりに

この時の作品群はLeicaカメラAG公式のノクティルックス50周年の代表作品群にも選出されている。さらにそのシリーズは同じく公式のLeicaカメラブログにも掲載され、前年のアイスランドのシリーズも含め合計3作品群がアーカイブからご覧いただけるので、石井靖久の初期作品群にご興味ある方はぜひ。

https://leica-camera.blog/tag/yasuhisa-ishii/

作例に使用したレンズ

【商品情報】Leica ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH. ブラック11602

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