昨年10月の開発発表から約1年、ソニーEマウント待望の超望遠レンズ「FE 400mm F2.8 GM OSS」が先頃発売開始されました。
先日公開された動物園撮影のレポートに続いて、わずかな時間ですがα9との組み合わせで新幹線と航空機を撮影してきましたので、写真も交えてレポートしてみたいと思います。
300km/h近くで駆け抜けるE5系。今回他の写真でも電子シャッター使用の高速連写を多用しましたが、動体でも歪むことなく撮影できるのはさすがα9です。
使い始めほぼ初期状態のままでのAF追従精度は7割程度かなといった印象です。α9を使用したのは今回が初めてで、高速連写性能と合わせてどのように動作するか楽しみにしていた点の一つでしたが、少し期待し過ぎていたかもしれません。ただ、あくまでも初期状態のままでの話ですので、フォーカスエリアや追従感度設定等、ボディ側の細かな設定を被写体や現場状況に応じて追い込めば、より合焦精度を上げられるのではないでしょうか。
ほぼ同じ地点から反対向きで撮影。E3系「つばさ」とE2系「やまびこ」の長い編成が弧を描いて通過します。
Gマスターの名を冠するレンズだけあって、レンズ単体での描写が良いのはもはや当然ですが、その高い描写性能のおかげで2倍のテレコンバーターを使用しても画質の低下がほとんど気になりません。
2倍テレコンバーターを付けた状態でAPS-Cモードに切り替えれば、さらに強い望遠効果が得られるのでは、とふと思いつき実践。2倍テレコン装着で800mmのさらに1.5倍計算で1200mm F5.6(相当)というとんでもないスペックのレンズに早変わりします。強烈な圧縮効果と、夏場ならではの陽炎も相まって季節感も記録できた1枚になりました。
APS-Cモードにすると画素数は約2,400万画素から約1,000万画素に下がるものの、余程の大伸ばしでなければ問題ないでしょう。
テレコンを装着しないレンズ単体状態であれば、後述する本体の軽さのおかげで問題なく手持ち撮影できましたが、テレコンやAPS-Cモード使用時には一脚が欲しくなりました。ちなみに、レンズ先端にはカメラ側の各種設定を登録できるファンクションリングが設けられており、ここに「APS-C撮影」を割り当てると、リングを少し動かすだけで素早い切替えができます。ボケ具合のチェック。本体の軽量化のために、鏡筒前方のレンズ配置を少なく抑えた、従来では見られないようなユニークなレンズ構成でどんな描写になるのか気になりましたが、絞り開放でもピントが合った部分のシャープさと自然なボケ味が両立しておりとても驚きました。
受注生産のレンズということもあり、組み立ての際は1本1本、通常のレンズ以上に精密な調整が行われているとのことです。
場所を変えて涼しい地下ホームへ。この場所では自分の所有機材でも度々撮影していますが、「F値が明るい超望遠レンズ・高感度性能が有利なカメラ」という最高の条件の機材が手元にある今、これを使えばもっと良く撮れるのではないか…?というわけで試してみようと思った次第です。
カメラの操作にも慣れて、AFモードの設定もある程度カスタムできたおかげで、明かりもわずかでなかなか厳しい条件ながらピントを大きく外すことなく撮影ができました。
新幹線以外も撮りたくなったので羽田空港へ。撮影当日は超望遠レンズ向けのバックパックに入れて背負って電車・新幹線で移動しましたが、レンズ自体の重量が軽いおかげで夕方の時点でもそこまで疲労感はありませんでした。
従来の超望遠レンズなら、電車移動で1日持ち歩けばそれだけで疲れてしまうところですが、一眼レフ用同等クラスのレンズと比較して約1kg軽いとのことで、撮影時・移動時ともに体感で実際にはもっと軽いのではないかと感じただけでなく、日中の撮影からそのまま続けて羽田まで行ってしまおうと思えたくらいに、気持ちの面でも従来のレンズとは異なる使用感が得られたのは今回一番に驚いたことでした。
風がとても強く、流し撮りでカメラを振るのも一苦労でしたが、機材の性能を活かしてなんとかモノにできました。
従来Eマウントボディで超望遠域の撮影を行うには、「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」を使用するか、マウントアダプターを介して「300mm F2.8 G SSM II」等のAマウントレンズを使用するかの二通りの方法がありました。しかし、前者は描写・AF性能とも申し分ないもののズームレンズで開放F値が暗く、後者ではα9と組み合わせた場合に約20コマ/秒連写や連写中のAF追従に対応しないなどの機能制限がある影響で、ボディ性能をフルに発揮できない難点がありました。
今回、初のEマウント用大口径望遠単焦点としてこのレンズが登場したことで、ミラーレスのαシリーズボディの機能にフル対応した他、前述の難点を解消できる第三の選択肢が生まれることとなりました。
正直なところ、前述したように動体に対してのAF追従精度が「百発百中」の域にはまだまだ到達していないと思ったのが今回唯一残念に感じた点ですが、これはレンズの欠点というよりは、ボディ性能の進化の余地がまだあるということではないかと思います。実際、AF駆動用のモーターは今後の更なるスピードアップを見据えたものが採用されているとのことです。
従来ではできなかったことが、次々と実現されているミラーレスカメラシステム。まだまだ発展途上であることは否めませんが、これからの進化に期待したいところです。
※写真データはJPEG・エクストラファインで撮影したものを縮小。特記のないものはすべて、クリエイティブスタイル:スタンダード / ホワイトバランス:AWBで撮影
Photo & Text byフジヤカメラ店スタッフ 浅葉