昨年の春、自分でも購入し、動画用に使い易いミラーレス一眼カメラとして紹介したSONY α6400ですが(動画で使う SONY a6400 レビュー)、その後下位グレードの α6100(2019年10月発売)、上位グレードのα6600(2019年11月発売)が、それぞれ発売されました。
スペック的に似通ったカメラが3台もラインナップされたおかげで「もうどれを買えばいいのかわからん!」という声をいただき、今回この3機種について、動画で使うミラーレス一眼としてのポイントをまとめてみました。
最初に動画撮影でポイントとなるスペックについて3機種を比較してみます。
α6100 | α6400 | α6600 | |
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サイズ/フレームレート/転送ビットレート | 4K/30p/100Mbps | 4K/30p/100Mbps | 4K/30p/100Mbps |
常用ISO感度 | 100~32000 | 100~32000 | 100~32000 |
マイク端子/ヘッドホン端子 | 有/無 | 有/無 | 有/有 |
ボディ内手振れ補正 | 無 | 無 | 有 |
タッチパネル | 有 | 有 | 有 |
バッテリー | FW50 | FW50 | FZ100 |
PP(ピクチャープロファイル) | 無 | 有 | 有 |
重量(バッテリー、メモリーカード含) | 約396g | 約403g | 約503g |
ボディ販売価格 | α6100ボディ価格 | α6400ボディ価格 | α6600ボディ価格 |
画質的には3機種ともほぼ同じと考えていいようです。
バッテリーや手振れ補正、PP(ピクチャープロファイル)の有無が選択の動機になりそうですので、それぞれのおススメの使用法、ポイントを解説したいと思います。
α6600 を使う大きなメリットの一つは、ボディ内手振れ補正がある事で、レンズを選ばず手振れ補正の効いた、安定した画を撮る事が可能です。
特に、単焦点レンズは手振れ補正機能が付いていない事が多く、動画の手持ち撮影でフィックスに近い安定した画を撮る事は困難です。オールドレンズや、LAOWA、七工匠などのマニュアルフォーカスレンズを使う際も同様です。
表現の幅が広がる単焦点レンズやマニュアルフォーカスレンズを使うなら、ボディ内手振れ補正のあるα6600がおススメです。
中級クラスのオンカメラマイクは、アンプが内蔵されており、バッテリーを入れスイッチを入れて使いますが、ここで問題が生じます。私のようなおっちょこちょいはスイッチを入れるのを忘れてしまうのです!
(余談ですが、カメラのスイッチに連動してON/OFFする便利なオンカメラマイクもあります!)
ヘッドホンを使って撮影中も音をモニターしながら撮ればそんな心配は無用です(笑)。これに限らず、本格的に映像制作を行うなら、実際に記録される音を聴きながら撮れる事のメリットは多いと思います。
マイク端子と併せて、ヘッドホン端子を持っているのは、この3機種中α6600だけです。
マイク端子が付いた事で α6100 も、動画機としておススメ出来るようになりました。
画質や強力なオートフォーカスは上位2機種と同等の機能を有しているので、撮ったままをカット編集するだけなら、α6100 は動画初心者にも使い易くコスパのが高い機種だと思います。
動画機としての弱点は、PP(ピクチャープロファイル)が無い事で、動画ユーザーが良く使うLogやHDR(ハイダイナミックレンジ)規格の「HLG(ハイブリッドログガンマ)」が設定出来ません。LUTを当てたりしてイメージどおりの画づくりを高品質に楽しむ事が難しいのは、最近の動画編集のトレンドからは少し物足りないかもしれません。
又、電子ビューファインダーのドット数が少ない(α6400:約236万ドット、α6100:約144万ドット)ので、ファインダーを覗いて撮る事が多いなら、α6400を選択した方がいいかもしれません。
α6100との価格差で迷いますが、α6400はピクチャープロファイルが使えるのが、大きなメリットで、映像表現を楽しむなら魅力的な機能です。
良く使われるPPは「S-Log2、S-Log3」「HLG(ハイブリッドログガンマ)」の3つだと思います。
α6400では、PP7がS-Log2。良く使うので番号を覚えておく便利。
私はカラーグレーディングをするほどのスキルはありませんが、ピクチャープロファイル(PP)は楽しいと思いますし、自身でもたまに使います。
カラーグレーディング前提で撮る際、S-Logは露出などシビアで画作りも難しいと感じる方は、PP6(CINE2)がおススメです。S-Log程では無いですが、ちょっと広めのダイナミックレンジで撮れるので、失敗も少なく、個人的にもよく使います。
初心者の方に特におススメです。
映像表現をしようという意気込みがあるなら、ピクチャープロファイルは魅力的な機能なので、ここがα6100ではなく、α6400を選ぶ動機の一つになると思います。
上の画像は、PP6(CINE2)、PP7(S-Log2)で撮影した画像に、Adobe Premier 付属のLookをあて、少し補正しただけですが、同じフレーミングでもイメージの違う映像となっていると思います。
PPの為に2万円も高い機種を買うのに躊躇する方もいると思いますが、個人的には楽しい機能なので、おススメです。
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又、メーカーのキャッシュバックがある期間は、価格差もグッと縮まる事が多かったので、キャッシュバックの有無と金額は確認して購入した方がいいでしょう。
実売価格でもα6600とは大きく価格差があるので、ボディ内手振れ補正、2倍以上長持ちなバッテリーNP-FZ100に価格差分の価値を見出せるかがポイントだと思います。又、重量が約100g軽いのは、マイクやケージなど付属物が多くなる動画撮影ではメリットです。
個人的にはカメラは2台持ちした方が、リスク回避になりますし、ジンバルなどの特機も使い易くなるので、一台目をα6400にして、将来的にα6600を購入してα6400をサブ機にする、という方法もありだと思います。
SONY α6600 の、α6400やα6100に対するアドバンテージのもう一つのポイントは、大容量バッテリーNP-FZ100を使用している、という事です。
バッテリーが大きい為、SDカードの入れ方も違うα6600。他の2機種よりもSDカードの出し入れがし易い。
実は、最近気づいた事なのですが、4Kの撮影はFHDの撮影に比べてバッテリーのもちが少し悪くなるようです。もともとバッテリーのもちが良くないα6400(α6100もほぼ同等)は4K撮影では予備バッテリーは必須です。
本当に4K撮影時にバッテリーの消耗が速くなるのか試してみました。
SONY α6400 で、実際にFHDと4Kをそれぞれ撮影してみて、バッテリー残を見てみました。
30分程の撮影で、バッテリー残はFHDで81%、4Kでは70%で、誤差とは言えない程度の差がありました。今回はカメラも被写体も動かない(フォーカスも固定)条件で撮影しましたが、被写体が動くと処理も複雑になると思うので、もう少し差が出るかもしれません。
バッテリー交換の手間もありますし、特に4Kでの長回し撮影が必要なら、迷わずα6600を選択するべきだと思います。盲点でしたが、結構重要なポイントかもしれません。
少しづつ機能が違う3機種は、選ぶのに困ってしまいますが、機能はやはり価格なりで、予算的にα6600が購入出来れば、それに越した事は無いと思います。
α6400との違いは大雑把に言ってボディ内手振れ補正、バッテリーの2つですが、いずれも撮影に大きく影響する部分なので、予算が許すなら外さない方がいいでしょう。悩ましいのは、価格的にα7IIIが視野に入って来る事ですが、低照度重視ならα7III、オートフォーカス重視ならα6600といった分け方でいいと思います。
α6100、α6400は、機能の割に価格がリーズナブルなところが魅力で、画質面でも上位機種のサブが十分務まりますから、将来的なグレードアップを視野に、最初の一台として選んでもいいかもしれません。
又、今回取り上げた3機種は、形がほとんど同じなので、ケージなどのサードパーティー製のアクセサリーが共用できるものが多く、グレードアップし易いのもSONYのAPS-C機を動画用に選択するメリットの一つだと感じました。