TAMRON (タムロン) 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD (Model A043N) のレビューです。
メーカーの意図どおり、ポートレート撮影でテストを行いたかったのですが、今回は敢えてメーカーの意図とは別な被写体を選びました。今回の被写体は・・・
「猫」です!
35mmというスナップにも使える準広角から、120mmよりも長い焦点距離150mmを、開放f値2.8~f4でカバー出来るレンズという事で「逃げる猫、擦り寄る猫」のいずれにも1本で対応出来ると思い、セレクトしました。
TAMRON (タムロン) 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD の重量は 790g(Nikon用)と、一般的な大口径の望遠ズームレンズと比較して軽量なのも、意外とアクティブに動き回りながら撮影しなければならない猫の撮影に最適と判断しました。
何より猫が好きなのです。
さて、猫を撮るにあたり、最も困る事は何でしょうか?ズバリ、猫が居ない事です。
事前のリサーチと、持ち前の猫センサー(ただのカンです)を駆使してロケーションに選んだのは、とある港街。
猫には海が良く似合います。
しかし、現場に到着して困りました。猫が一匹も居ないのです。影も形もありません。
波の音にのって、かぐわしい潮の香り漂う港で、一人立ち尽くします。「スナップ撮影に変更か?」テストボディとして選んだ、軽量なNikon Z7のストラップが、急に肩に食い込んで来た気がしました。
と、その時・・・
いた!いました!第一村猫発見です!しかし、明らかにこちらを睨んで警戒しています。逃げられるか!?
でも大丈夫です。今回セレクトしたレンズは TAMRON (タムロン) 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD です。ローアングルにする為に腰を落として、先ずは150mmから、カシャ!・・・1カット撮ったところで逃げられてしまいました。
あぶないあぶない。これで120mmまでの標準ズームだったら、撮れなかった公可能性が高いですから、先ずはテレ端が150mmからある事に感謝です。
とりあえず一匹撮れた事に胸をなでおろしていると、背後に気配が。
居た!第二村猫発見です。こちらが入れないフェンスの向こうで、安全とわかっていながら、一応目だけ警戒しているけしからん猫です。金網の隙間からパシャリ!
先ほどの猫といい、この猫といい、毛並みの色つやも良く、近隣の住民の方々に愛されているのがわかります。猫には優しい土地柄のようです。
さらに猫を探して徘徊します。
港町と言うのは、どこもかしこも画になるものです。この階段の途中に猫が座っていたら、なかなかフォトジェニックだったのですが、残念ながら無猫でした。
しかし、平日、午前中のこんな時間から、いい大人が一人でカメラをぶら下げて徘徊していると、通報されそうで少しドキドキしますが、特に怒られることも無く、無事に撮影を進められました。
ここは猫にもカメラマンにも優しい町のようです。
港町らしい雑多な資材置き場に止められた軽トラックのわきに佇む猫発見。
長毛が風に逆立って凛々しい姿です。
個人的に猫と港(海)の組み合わせは画になると思います。
階段を降りようと思ったら、別な猫がこっちを見ていました。
今回の撮影スタイルは、先ず初めに150mmで押さえて、じりじりとにじり寄りながら焦点距離をワイド側に振って行く方法です。
TAMRON (タムロン) 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD の、長焦点側150mmのお陰で、見つけたのに撮れない、という事はほぼありませんでした。
先ほど軽トラのわきに佇んでいた猫が移動してくつろいでいました。猫の気ままな生活にちょっと憧れます。
猫の活動時間になって来たからなのか、猫を見つけるコツをつかんだからなのか、どんどん猫が見つかりはじめました。
良かった。来た甲斐がありました。
小柄なお嬢さん猫が、なにやら海の方を注視しています。
はて?お迎えの爺やがやってくる時間でしょうか。
それとも彼氏待ちでしょうか。
やって来たのは、筋骨たくましい、スポーツマンタイプの彼氏でした。
ん?こいつ、一番最初に私を睨んでいた(1カット撮ったら逃げ去った、サービス精神の無い)あいつではないですか!お嬢さん、そんな奴と付き合わない方がいいですよ。
案の定この後、2猫はケンカ別れしていました。正しい判断です。
ふられたマッチョな彼氏が海を見ながらたそがれていました。
ふられてから近くで撮らせてくれるとは、俺に慰めて欲しいのか。
可哀そうだが俺は猫語を解さないのだ。大丈夫。時間が解決してくれるさ。
猫のいざこざを見て、人生のはかなさを知ったので、ちょっと海を見に来ました。
国破れて山河在り、城春にして草木深し。
初夏の潮風に心洗われて、回復したので、そろそろ切り上げて帰る事にします。
拡大して、画質を見てみたいと思います。
実写テスト1枚目の猫の部分の拡大画像ですが、素晴らしくシャープで高解像度です。
それでいて、柔らかさが残るのは、ポートレートズーム故なんでしょうか?有名な90mmマクロを彷彿とさせる、タムロンらしい描写です。
テストカメラはNikon Z7 にマウントアダプターFTZを介してAFで撮影しましたが、ピントもバッチリで、TAMRON (タムロン) 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD は、Nikon Zシリーズとのマッチングにも問題なさそうです。
焦点距離90mm付近で撮影した、9枚目のカットからの拡大です。
メーカーの説明では、85mm付近で、性能も最も良くなるという事でしたが、150mmでも十分過ぎる程性能がいいので、正直大きな違いは感じられませんでした。
35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD は、最近のタムロンらしい非常に高性能なレンズだと感じました。
85mmを中心に据えるコンセプトは、猫撮影にバッチリはまりました。70-200mmよりもかなりコンパクトで、24-120mmよりも望遠が効くので、非常に使い易かったです。
特にテレ端が150mmからある事で、撮れるシチュエーションが格段に多くなりました(今回の撮影では、全カットの55%手度が120mmよりも長い焦点距離で撮影されていました)。
今回は「擦り寄る系の猫」が居なくて、35mmを使うシチュエーションはありませんでしたが、広角f2.8で背景をボカしたカットも撮ってみたかったです。ズーム全域で最短撮影距離が0.45mと短い(最大撮影倍率1:3.7)ので、「擦り寄る系の猫」でも安心して使えたと思います。
メーカーの意図に反して、ポートレートではなく、猫の写真でテストを行いましたが、焦点距離「85mm」を中心に据えるというコンセプトは、猫以外にも使い道がありそうで、新たな可能性を感じたレンズでした。