FUJIFILM の第4世代センサー X-Trans CMOS 4 を搭載したミドルグレードのカメラ X-T30 の実写レビューです。
X-T30 は2610万画素の X-Trans CMOS 4 センサーを搭載した機種としては、X-T3に次いで2番目の発売となります。
X-T3よりも3割ほど軽量(X-T30:383g、X-T3:539g(各バッテリー、SDカード含む))で安価な(2019.3.20現在)ボディは、防塵防滴やプロ機並みの高性能な動画画質などが必要無いユーザーには魅力的で、上位機種と同じ、X-Trans CMOS 4 の高画質をリーズナブルに味わえる、コスパの高いカメラと言えます。
そんな FUJIFILM X-T30 に、単焦点レンズ2本を持って、テスト撮影に出かけました。
夕日を浴びて梅の花が輝いていました。だいぶ暖かい季節になって、テスト撮影も肉体的に楽になって来ました。
以前、自分でも X-T10 を所有していた事があるので、FUJIFILMのカメラは使い勝手で苦労する事が無くて助かります。
強烈な逆光線のなか、手前の花にピンポイントで合わせなければならず、残念ながら X-T30 のAFはうまく合焦しませず、MFに切り替えて撮影しました。
リアコマンドダイヤルを押してピントを拡大、フォーカスしてシャッターを切るまでのプロセスがよどみなく行えます。慣れもありますが、FUJIFILMはこのあたりの使い勝手のいいメーカーだと感じます。
先ほどの梅とは反対に、散りゆく椿の花を露出をアンダーにして撮影しました。
フィルムシミュレーションは、当社スタッフにも評判のいいクラシッククロームを選択しました。表現の意図に合わせて、簡便に色調を変えられるFUJIFILMのカメラの特徴を活かしながらの撮影です。私のような素人には、画像処理で下手にいじるよりも、カメラに提案をしてもらった方が、安心で安全です。
リバーサルフイルムをリアルタイムで使っていた世代なので、馴染みがあって理解し易い、というのも安心できていいですね。
公園の柳の木が新芽を吹き始めていました。
強烈な夕日の逆光をETERNAモードが雰囲気たっぷりに描写してくれました。コントラストが低く黒が完全に黒く締まらない、ひと昔前の映画のような描写をするETERNAモードは、個人的にも好きなフィルムシミュレーションです。
トップグレードなカメラにしか採用されなかった ETERNA モードが、X-T30 で初めてミドルグレードの機種にも採用されたのは嬉しいかぎりです。
動画フィルムのシミュレーションなわけですが、コントラストの低い独特な再現は、写真でも色々と活用出来そうです。
夕暮れの商店街を歩きながら、撮影しました。綺麗に飾られたウィンドウに灯がともり始め、とてもフォトジェニックです。
今回、FUJIFILMを使っている同僚のすすめで、フィルムシミュレーションに「クラシッククローム」を多用しました。
街のスナップに「Velvia」もどうかと思いますし、「PROVIA」はスタンダードすぎてつまらない・・・大好きな「PRO Neg. Std」は、「ETERNA」とキャラがかぶる気がしたので「クラシッククローム」と「ETERNA」の2モードを切り替えながら撮影を進めました。
どのモードを選択するか悩む楽しみは、FUJIFILMのカメラを使う醍醐味の一つです。
今回、X-T30のテストで「おっ!」と思ったのは、以前よりAFの合焦が良くなっている点です。
フォーカスポイントをスポットにして細かいピント合わせをする際、以前であれば数回失敗してMFに切り替えるような状況でも、思ったよりテキパキと合焦してくれます。
動体に対してはどうかわかりませんが、スナップ程度であれば、十分快適に撮影を進められました。勿論、ジョイスティックによるピント移動も快適です。
メーカーの方には申し訳ないのですが、X-T30 は、FUJIFILMのカメラで初めてAFに大きな不満なく使えました。
上の画像からの拡大画像です。
毎回FUJIFILMのカメラの描写力には驚かされます。シャープだとか、解像感が高いといった事だけでは説明出来ない、質感、ニットの柔らかさや温かさが伝わる描写だと感じます。
何処かにフィルムのようなアナログな暖かさを感じる描写です。
ふと、背後に視線を感じてふりかえると、むっちゃ見られてました。美女に。
今回の X-T30 のテストに持ってきた2本レンズの内1本は、大好きな XF56mmF1.2 R APD で、柔らかい描写のおかげか、ETERNAとの相性もいいようです。
諧調が豊かで、少し霞んだような柔らかなコントラストが美しいETERNAモードは、これから「春」の季節を写すのに向いているんではないでしょうか。
白熱電球の暖かい光に照らされたウィンドウに、春めいた洒落た模様のスカートが3つ。均等に並んでいないところに、ショップのセンスを感じます。
リバーサルフィルムのシミュレーション「クラシッククローム」を使って撮影しました。ETERNAと違って、写真らしいコントラストと、メリハリのある色合いとなります。
名前のとおり、どこかノスタルジックな温かみのある色調なのも好感触でした。
あまりに多いフィルムシミュレーションを全て把握して使い分けるのは大変ですので、特性の違う2,3種類を切り替えながら使うのが、混乱せずいいかもしれません。
X-T3から受け継ぐべきところを正当に受け継いでいる、よくまとまったカメラだと感じました。
FUJIFILM X-T30 の、コンパクトで使い勝手のいいデザインは、お散歩カメラに最適だと思います。勿論フィルムシミュレーションの楽しさや、安定したカラーバランスはFUJIFILMのそれで、X-T3のサブカメラとしても、これからFUJIFILMのカメラをという方にも、おススメ出来るバランスの良さを持っています。
後日再度レポートしますが、X-T30 は、動画性能もなかなかのもので、自身で以前使っていたX-T10と比較すると、とても同じメーカーの映像とは思えなほど進歩していて感激です(→ FUJIFILM X-T30 動画機としての実力)。
X-Trans CMOS も第4世代となり、熟成された使い易いカメラだと感じました。