単焦点レンズを採用した、高画質なコンパクトデジタルカメラ RICOH GR III の実写レビューです。
GR III は、アーティストやクリエーター系のユーザーから、絶大な支持を得ているが RICOH GR の3代目のモデルで、GRIIから、新レンズの採用、センサーの高画素化、高感度特性の強化、手振れ補正の採用など、シリーズ中最高画質をうたうモデルとなっています。ポケットに入る携帯性から来る速射性、一眼デジタル並みの高画質、が特徴の RICOH GR III を持ってテスト撮影をしつつ、フォト散歩を楽しみました。
すっかり春の陽気となり、テスト撮影が楽しい時期になってきました。梅を皮切りにこれからは菜の花、桜、桃など、色とりどりの草花が咲き始めるので、被写体にも困りません。
朝一番、最初の一枚は菜の花になりました。近接撮影ですが RICOH GR III のオートフォーカスはまごつく事も無く、快適に撮影出来ました。
いきなりですが、高性能になったレンズ、センサーの実力を見る為に少し拡大してみます。
非常に高性能なレンズです。
シャープでありながら立体感のある描写はさすがGRです。一般的に難しいとされる黄色も、ひと昔前であればバンディング(トーンジャンプ)が起きてもおかしくないようなシチュエーションですが、なめらかに諧調がしっかり残るリアルな描写となっており、センサー、映像エンジンのレベルの高さが伺えます。
恥ずかしながらGRシリーズのカメラをじっくりテストするのは、今回が初めてなのですが、のっけから RICOH GR III 性能の良さに唸らされる結果となりました。
日中、お客のいない飲み屋街はスナップには持って来いのロケーションです。
最近のワインのラベルは、色々なデザインがあって面白く、CDを買う際の「ジャケ買い」と同様に、ワインの「ラベル買い」も面白そうです。
被写体を探す→「お!」と思った瞬間→ポケットからサッとカメラを取り出して起動(GR III の起動速い!)→フォーカスポイントをタッチパネルで設定して→レリーズを切る、そんな撮影の流れが RICOH GR III はとても気持ち良く出来ます。
「究極」のスナップシューターが「至高」の撮影タイムを提供してくれました。
高度に開発された都市にも、どこか懐かしい、ノスタルジックな場所がちょっとは残っているものです。
最近、テスト撮影を街中で行う事が多いのは、そんな被写体探しが楽しいからかもしれません。写真の楽しみの一つは被写体探しだと思います。
大きな商業ビルの裏通りですが、コンクリートで固められたビルのすぐ横に、薄い板塀に囲われた建物があるのが不思議な感じです。都内にはこんな場所が沢山あります。なんということはない板塀にぬくもりを感じるのは、人が無意識に自然を求めているからなのでしょうか。
黒っぽい板塀を、豊かな陰影を残して RICOH GR III が趣ある雰囲気に切り取ってくれました。
思い立ったら気軽に撮れる。それでいてクォリティはトップクラス。
それが RICOH GR III の存在意義の一つだと思ったので、撮りたくなったら必ずカメラを出して撮るように心掛けました。「必ずシャッターを切るしばり」でのテストです(笑)。
気軽に撮るなら今はスマホの時代ですが、それに負けないくらいの手軽さを発揮してくれました。
さて、手振れ補正が搭載され、最高ISO感度が102400となった RICOH GRIII は、いままで以上に活躍のフィールドが広がったはずです。
今回のモデルチェンジで、特に向上したであろう低照度下での性能を見たくて、夜間のスナップに出かけました。
普段見慣れた橋も、高感度に強いデジタルカメラで撮影すると、幻想的で美しい風景に変貌します。
ISO感度は5000で、ノイズの発生もみられますが、写真全体としてのリアリティには、まだ余裕があるように感じます。RICOH GRIII の映像エンジンはノイズを除去するのではなく、無理しないで残しつつ、画として成立させるチューニングのようです。
残念ながら夜間の撮影では、若干AFが迷いました。低照度下でのAF限界は高くない様なので、明るい場所やコントラストの高い場所を見つけてフォーカスするなどの工夫が必要です。
狭い路地の中は小さな料理屋や飲み屋がぎっしり。入店したいのをグッとこらえてシャッターだけ切りました。
このくらいの明るさがあれば、AFも日中同様キビキビと合焦してくれます。
色とりどりの人口光を映像エンジン GR ENGINE 6 が、いい雰囲気に写し取ってくれました。神隠しに合いそうな雰囲気です。
路地を一歩入ったら、そこで試合終了なので、グッとこらえて場所を変えます。
真っ暗な公園の池を、高感度で狙いました。
限界近い、ISO32000で撮影していますので、この大きさで見てもノイズがかなり出ているのがわかると思います。ノイズだらけの写真にも、それはそれで趣があります。
敢えてノイズを出したければ、ISOは25600以上を選択すればいいようです。
はい!最後は結局酒場に入ってしまいました。見る人が見れば、コップの中の日本酒が純米吟醸、しかも無濾過、生、原酒である事がわかると思います。さすが GR III の描写力です・・・(嘘です、写真だけでそんな事がわかるはずがありません、すみません)。
冗談はさておき、いい味のレンズです。蛍光灯に照らし出された安っぽい机の質感、並々と注がれた日本酒のトロ味、テーブルの向こうで話し込むサラリーマンとおぼしき人影・・・うらぶれた、それでいてどこかあたたかい酒場の雰囲気を上手く写し撮ってくれたと思います。日本酒の香ばしい芳香が漂って来そうです。
さて、カメラをDOMKEにしまって、撮影につきあってくれた友人とカメラ業界の未来と我が社の行く末について、真剣に語り合いましょう(すみません。また嘘をついてしまいました)。
今回初めて RICOH GRシリーズのカメラをじっくり使ってみて、とても付き合い易いカメラだと感じました。RICOH GRIII は、上手く撮りたいという意気込みと、気軽に撮りたいという手軽さを、どちらもうまく受け止めてくれる、ふところの深いカメラです。
新しくなったメニュー画面も、とっつきやすく使い易いと感じました。個人的には横幅が狭く、少しコンパクトになったデザインも、前のGRより好きです。
いつでもどこでもポケットに忍ばせておいて、思った時に素早くシャッターを切る、RICOH GRIII は、まさに看板に偽り無しの、究極のスナップシューターだと感じました。