発売間近のCanonのフルサイズミラーレス一眼「EOS R」を短い時間でしたがお借り出来たのでレポートしたいと思います。
操作フィーリング
いきなりネガティブな事を書くのは気が引けるのですが、使い始めて最初に感じたのは「シャッターフィーリングがいまいち」という事です。正直言って少し安っぽい感じがしてしまいました。20万円以上するカメラなのに・・・
しかし、撮影して、写真を確認すると「写りは素晴らしい!」40万円するカメラと同等以上に感じます。AFスピードも上々、ピントの精度も高く不満無く使えます。
カメラのフィーリングに対して結果の質が良過ぎる・・・
そんな不思議なギャップを感じながら、テスト撮影を行ないました。
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操作について少し気になったのは、新たに採用された「マルチファンクションバー」についてです。
私はホワイトバランスの変更を設定て使いましたが、あまりメリットを感じませんでした。操作し難い訳ではないのですが、ボタンやダイヤルでも良かったのでは?逆に誤操作などのデメリットを感じてしまいます。
場所も含めてもう少しうまい使い方があったのではないでしょうか。又、ボタンの数が少し少ない気がします。個人的にはボタンが沢山あった方が使い易いと感じる事が多いです。
使用前にボタンのカスタマイズが必要なカメラだと感じました。
文句ばかり書いてしまいましたが、写りは素晴らしいものでした。
レンズは専用の標準ズームレンズ「RF24-105mm F4 L IS USM」を使用しました。ショートフランジバックによるレンズの高性能化が活きているからか、現行の一眼レフ以上?と思われる事もしばしばありました。
秋らしく柿の実が熟していました。
RF24-105mm F4 L IS USM は幅広い被写体に対応出来る画角と、専用に設計された高性能なLレンズで、EOS R用の最初のレンズとして、購入を検討される方も多いと思います。
透明感のあるクリアな描写で、お!っと思いました。ギャップを感じた瞬間です。
アダプターで一眼レフ用のレンズを使う方も多いと思いますが、ショートフランジバックの優位性を体感する意味でも、是非おススメしたいレンズです。
今回のロケーションは、田んぼが残る田舎道をぶらぶらしながらのスナップにしました。
収穫された稲穂が、感想の為に大量に干してあります。秋らしい風景です。
解像感を見る為に、拡大してみます。
たわわに実った米の一粒一粒まで克明に描写されています。
立体感や階調も申し分なく、微細描写が求められる風景写真の大伸ばしにも十分対応出来そうです。
おそらく鳥がついばんでしまうのを防ぐ目的でしょう、赤い網がかけてあるのが分かります。
秋の花、コスモスが沢山咲いていました。
コスモスの繊細なピンク色が、透明感の高いクリアな描写で再現されていると思います。
秋の空気感が伝わる描写性能で「映像エンジンDIGIC 8」の実力の高さがうかがえます。
前回のSIGMA (シグマ) 60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSM | Sportsのレビューでチャレンジした昆虫写真に、再度チャレンジしました(笑)。
ピントはアザミの花で拾っています。小さなハチが飛んで来たので「チャンス!」とシャッターを切りました。多少絞って被写界深度を稼いで、花とハチにうまくピントを得る事が出来ました。
背景ボケは少しうるさい様な気もしますが、気になるほどではありません。
少し拡大してみます。
シャッタースピードがうまくはまって、胴体はブレずに、羽根だけブレました。
とても小さなハチですが、動体の模様や目の立体感などシャープに描写されており、レンズの実力はかなりのものです。
ハチってこういう格好をして飛ぶんですね。
小さなしじみ蝶が、草陰に羽根を休めていました。
いつ動くかわからない小さい被写体へのピント合わせは、精密で高速なAFが必須ですが「EOS R」は撮影者の意図に期待通りに応えてくれると思います。
ピントがばっちりなおかげで、しじみ蝶だけが浮き立って見えるように撮れました。
花火のような不思議な実がなっていました。
花火のような実のパチパチした雰囲気を出したくて、背景を木漏れ日になるようなアングルにしています。
ミラーレス一眼は、レンズ後玉からセンサーまで、さえぎるものがほとんど何もありません。おかげで、画面周辺部まで、点光源のボケが真円に近くなるため、こういった背景に大量の点光源が入る写真では、ボケがキレイになって美しい写真になります。
少し拡大してみます。
画面の端まで丸いボケが並びとても綺麗です。
パチパチした感じになったかは疑問ですが(笑)、ミラーレスカメラ用のレンズのメリットがよく出ていると思います。
一眼レフ用のレンズだと、ここまで綺麗なボケが出るレンズは少ないようです。
個人的にミラーレスデジタル一眼が好きなのは、モニターが可動式の機種が多く、アングルの自由度が高くなるからです。
「EOS R」もバリアングル液晶モニターを搭載しており、上の写真のような地面スレスレからのローアングル撮影もきちんとフレーミングして行なう事が出来ます。
像面位相差で、画面周辺部までフォーカスポイントがあるのもいいですね。
水面から生えた草が、花をつけていました。
黒い水面と反射した太陽の光が逆光となり難しい光線状態ですが、上手く露出が決まったと思います。以前よりCanonのカメラの露出は、出た目でも露出補正をかけても、感覚がつかみやすく扱いやすいと感じていました。
「EOS R」も同様な感覚で使い易かったです。
先の写真と同じ川面に咲いていたツユクサです。
最後のカットが季節感を狂わす写真になってしまいましたが、コスモスのカット同様、ツユクサの繊細な青色が上手く再現されていると思い選びました。
個人的にDIGIC 8の色再現はかなり好みでした。
残念ながら、Canon初のフルサイズミラーレス一眼カメラという以外、特徴が少ないカメラですが、特にレンズを含めた画質面での基本性能は高いレベルにあり、良くまとまっているカメラだと思います。
操作性の面で「マルチファンクションバー」や「ジョイスティックが無い」事など、いろいろ言われそうな要素はありますが、写真に影響を与えるほどでは無いと思います。
Canonのカメラは色の傾向や、ホワイトバランス、露出など、基本的な部分が良く出来ており、EOS Rもそういった部分で不満を感じる事は少ないと思います。映像エンジン「DIGIC 8」の画作りも個人的にはとても好みでした。
初めて買うEOSのフルサイズミラーレスのカメラとして、特に画質面で安心して購入できるカメラだと感じました。