ペンタックスのミドルクラス一眼レフ、「KP」がいよいよ2月23日に発売されます。このカメラは以前からちょっと気になっていました。特徴的な機能やいいところが複数あるのですが、ある性能に釘付けになってしまったのです。それは「ISO819200の高感度撮影を実現」でした。なんと、8万ではなく81万9200ですよ。これを見て、すぐに思い浮かんだ場所がありました。
上野動物園の西園には、小獣館という小さな建物があります。ここには、小さいけれど大きな魅力をもつ動物たちがたくさん暮らしているのです。中に入るとすぐに、不思議な動物たちの世界が広がるのですが、そこからさらに地下へと降りる道があります。ここを進んで行くと、「ようこそ 夜の世界へ」という案内板があり、そこから先は真っ暗闇になるのです。ここでは夜行性の動物たちが展示されています。活発に動くところを見せるため、開園時間中は夜の闇が広がっている。というわけです。ここで写真を撮るのはさすがに厳しく、それもそのはず文字通りの闇の中です。この条件ですが、ペンタックスKPならなんとかしてくれるかも ! 期待が持てます。
ショウガラゴです。小さな体でぴょんぴょん跳ね回るので、撮影というよりレンズで追っかけることすら困難です。枝の上に乗ってくれることもあるけれど、迅速なピント合わせが必要になります。合ったと思ったらいなくなってしまった、なんてこともしばしばです。ペンタックスKPはAFもなかなかに素早くて助かりました。シャッター速度はそれでも1/25です。厳しい撮影だなぁ。。。
スラウェシメガネザルといいます。目がクリクリしています。姿を見つけたお客さんからは、「かわいい?」の連発を受けていました。ちょうど枝に上っていたので、ガラスにレンズをくっつけて撮りました。暗闇なので反射が少なかったのも幸いでした。ISO感度は51, 200です。
キレイな色のミケリス。体の色が黒、白、茶色に分かれています。せっかくなので、この3色がハッキリわかるように、そして尻尾も入れて撮りたかったので、何度か立ち寄ってタイミングを探りました。ISOは102,400とかなり高めですが、意外とノイズは気にならないですね。
ISO感度は204,800です。天井からぶら下がっているコモンマーモセットを撮りました。この場所もそれなりに暗いのですが、F8が使えることがまず驚異的です。ざらついた印象は確かにありますが、このようなカットを撮れたことのほうが大きい喜びでした。ペンタックスKPはピントも正確です。
コビトマングースの仲むつまじいところを。こちらもちょこまかとよく動くので、立ち止まって何かしてくれている時には瞬時にピントを合わせてシャッターを押す必要があります。ペンタックスKPは動作が早いし、安定性も良いです。こちらを向いてくれたタイミングで撮影できました。
今回の最も大きな収穫です。これまで上野動物園には何度も来ていますが、ムツオビアルマジロの交尾を見たのはこれが初めて。日頃使っているカメラにはISO204,800などという設定はありませんので、ペンタックスKPを使っていたから撮れたことになります。目の前のシーンを記録としてきちんと残せることの大切さをあらためて感じます。KP使ってよかった ! ! ピントはマニュアルです。合わせている時は何が何だかわかりませんでしたが、スクリーンの見やすさに助けられました。
撮影しながらモニターで確認しても、ノイズはそこそこ目立っていました。そこでふと、「モノクロで撮影したら雰囲気が変わっていいかも ! 」と思ったので、カスタムイメージをモノクロに変えてみました。マヌルネコのアップを撮ったら、なかなかいい感じ。この55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE、なんと最短撮影距離が0.95mなのです。これはとても助かりますね。
枝にちょこんと座り、顔を上げたワタボウシタマリン。ISO感度は204,800ですが、このカットだけを見ると、そこまで上げているとは思えないから不思議です。かつてフィルムで撮っていた頃、露出が足りなくて増感現像したことがありました。仕上がってきた写真を見たら粒子でザラザラだったけど、撮れていて良かった。そういう経験を何度かしてきたので、これはこれで、悪くないんじゃないかと感じます。古い町並みとか建物とか、そうしたものを撮るときに敢えて高感度で撮影する。その領域がここまで広いと、表現の幅も広がるのではないかと思います。
穴から出てきたミーアキャット。空を見上げる定番のシーンです。両手は絶対に画面の中に入れたかったので、ズームを装着していたのは正解でした。これまたモノクロです。雰囲気があって好みの感じになりました。今回はペンタックスKPの高感度だけで撮影をしました。でも、当然低感度も使えます。風景を撮るときは低めにして画質を重視する撮影、そしていざというときには超高感度が使える。これは万能なカメラといえます。加えてこのKP、軽快さも魅力ですよ。
ペンタックスKPに、HD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WRを装着したところ。標準セットはこのスタイルになります。今回の撮影ではHD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE を最も多く使いましたが、コンパクトで重宝しました。この2本とペンタックスKPの高感度があれば、昼夜を問わず撮影を楽しむことができそうです。今まで諦めていた撮影ができるようになる。これは嬉しいですね。グリップのカスタマイズが可能だという点も、見逃せません。
早速、何本かのレンズとともに上野動物園西園に行ってきました。小獣館には最近人気のマヌルネコやミーアキャットもいるので、けっこうな賑わいでした。ペンタックスKPは非常にコンパクトに出来ているので、かさばらず持ち運びも苦になりません。標準装備されているグリップSは、薄型のフォルムですがしっかりと指がかかり、ホールディングしやすいです。ガラスの反射と写り込みを防ぐために、左腕でガードしながら右手だけで撮影するシーンも多かったのですが、それでも不安定になることはなく、しっかりとバランスを保てました。AFはとても信頼性のあるものです。暗闇での撮影だし、マニュアルで合わせることになるかと思っていましたが、たいていはAFで何とかなりました。合わせたいところの近くに少しでも光があれば、そこを起点にしながら合わせていく、ということが可能です。これは頼もしかったですね。使いやすいです。
高感度性能ですが、6400くらいまでは特に何の問題もないと思います。とはいえ、409,600と819,200では、さすがにモニター上でノイズがたくさん乗っているのがハッキリとわかります。でも102,400と204,800は、被写体によって十分に使用価値のある写真が撮れると感じました。画質とか写りとか、そんなことよりも「写真」の本質が問われるべき瞬間、それは記録するという点でしょう。これまではほとんど不可能に近かった領域の撮影がいとも簡単にできるようになったというのは大きな功績であり、それだけでも使う意味のあるカメラだと思うのです。
■撮影場所
東京都恩賜上野動物園
http://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/ (2017年2月15日取材)※撮影はJpeg、手持ちで行っています。カスタムイメージは風景に設定。
Photo & Text by 高山景司
>>> PENTAX(ペンタックス) KP ブラック ボディ