国立科学博物館附属自然教育園は、東京都港区にあります。自然保護の観点から、入園者が同時に300名を超えないよう配慮されています。もともとは一般の人々の立ち入りが許されていなかった場所なので、豊かな自然が残されました。昭和24年(1949年)に天然記念物および史跡に指定され、一般公開が開始されました。紅葉の撮影では、通り過ぎた場所を振り返るようにしています。日差しが少しでも差し込んでいれば、逆光になるとコントラストが高くなるからです。
10月に発売されたXF23mmF2 R WR。発売されてすぐに「本日のフジヤ」でも取り上げていましたね。パッと見ただけでも小型軽量だということがわかります。今回はこのレンズを、これまた今年発売になったX-T2に装着して撮影してきました。最近はカメラを持って歩く機会が大きく増えまして、この日は3時間半ほど歩きました。でもなかなか痩せないのです。
さて、このXF23mmですが、135mm換算では35mm相当になります。使いやすい画角です。全長は僅か51.9mm、重さはなんと180gしかありません。毎日持ち運んで、気になったものがあったらすぐ撮影に使えそう。掌にすっぽり収まってしまいます。6群10枚のレンズ構成のうち、非球面タイプが2枚採用されました。金属パーツを使った外装からは、高級感も感じ取れます。防塵防滴・マイナス10度の耐低温構造なので、ちょっとした無理も利きそうです。
大きめの葉が撮りやすそうな位置にあったので、絞りを開放にして撮ってみました。まるで葉っぱのポートレートです。ピントは葉の中央に合わせています。それ以外のところはふんわりと、柔らかな描写になりました。背景のボケも暖かみのある印象です。これを利用して、ちょっと柔らかく表現したい時などは、敢えて絞り開放で狙ってみるのも面白そう。個性的な一面ですね。
紅葉がちょうど見ごろを迎えている、という情報をキャッチしてから出かけたので、タイミングよく色付いている木を容易に見つけることができました。肉眼では2つの木がバラバラに色付いているように見えたのですが、35mm画角で立ち位置をあれこれ変えながらファインダーを覗いていたら、画面右に置いた2つの紅葉の枝が重なるポジションを発見したのです。これによって画面のボリューム感が増しました。紅葉に包まれている、そんなイメージが膨らみます。葉の1つ1つがしっかりと解像していますし、色合いはまさに好みです。さすがフジノンレンズ。
園内をてくてく歩いていると、様々な紅葉が姿を変えて現れます。ついつい立ち止まって、じっくり狙ってしまいます。露出を変えて、タテヨコ構図を変えて、立ち位置を変えて。この場所で20回シャッターを切りました。画面の上の枝、下にある黄色い紅葉のバランスを保つためにどうすればいいか、そんなことをずっと考えていました。何度もピントを合わせの作業を行いましたが、XF23mmF2はその都度しっかり素早く動いてくれて、迷うこともありませんでした。
ちょっと不気味なたたずまいの、大きな木。鱗のような幹の模様と、紅葉のカーテンを同時にフレームに入れたので、木のディテールが損なわれないように露出補正をいくつか変えて撮影しています。ここが東京都港区であることを忘れてしまうような風景でした。XF23mmは、フォーカスレンズに非球面タイプが使用されています。そのため、撮影距離の変更による画質の変化が抑制されているそうです。AFの作動音も小さめで、気にすることもなく集中できました。
園内にある「ひょうたん池」にて。ここを通りかかった際、まず眼に入ったのがこの風景でした。ちょうど陽が差していてコントラストも高くなり、水面の映り込みがはっきり出ています。見事な水鏡。やってきた他の入園者たちも、皆めいめいのカメラやスマホを向けて撮影していました。この場所ではカワセミの姿も見られるそうで、休憩スペースで開催されていた写真展には、美しい姿の写真が飾られていました。マクロや望遠を使って撮影するのも、きっと楽しいでしょう。
植物に囲まれた道を歩いていると、小さな脇道がありました。入ってみたら、湿地帯のビューポイントがあり、葉に覆われた古木が聳えていたのです。こういう風景はとても好きなので、これはいいものを見つけたと思い、喜んで撮影。手前にある、枝が四方に伸びているところと絡めて、寂れた雰囲気を出してみました。この古木の中に、仙人が隠れていそうです。AFが素早くて、X-T2も軽快です。ダイヤルに「C」のポジションが付いて、露出補正がしやすくなりました。
ここは「いもりの池」と呼ばれているところです。池を覆う紅葉に目を奪われました。35mmの画角でちょうどいい感じ。池の全体と、そこに被さるような紅葉を狙いました。陽が出てくるのを待っていましたが、残念ながらそれは叶わず。画面下に緑の葉を入れ込んで、ワンポイントにしています。子供の頃、ここの近くでザリガニを捕まえ、職員に怒られたのを思い出しました。
撮影したのは14時36分。この時間でも、陽が当たらないと露出が上がりません。木の幹にピントと露出の基準を置いたので、補正値もかなり大きくなっています。細く長く、ぐんぐん伸びている細い枝。これを見ていたら、我々人間のすべてが持っている、あるものを連想しました。画面の右に紅葉を入れ込んでいるのは、それと関連付けています。1つ1つの素材がハッキリと写し出されたので、シンプルでありながら力強い雰囲気を醸し出している、そんな気がします。
さあそろそろ帰ろう。そんなことを思いながら出口に向かっていました。前方の木を見ていたら、歩いていくにつれて逆側の木と重なっていくのが目に留まりました。そこで、両方の木がくっついたように見える位置で立ち止まり、トンネルを作りました。背景にはほんのり紅葉を入れて撮影しています。こういうちょっとした面白い状況を見つけると、なんだか得した気分になります。
XF23mmをX-T2に装着したところ。赤い「XF」の文字が目を引きます。フードは同梱されていますが、別売で金属製のスリット付フード(LH-XF35-2、XF35mmF2R WRと共通)を使用することもできます。最短撮影距離は22cm。それなりに寄って撮ることもでき、楽しい撮影になりました。
撮影は東京都にある国立科学博物館附属自然教育園で行いました。JR目黒駅から歩いて10分ほどのところに、広大な森が残っています。紅葉がちょうど見ごろを迎えていました。X-T2も軽いので、この組み合わせは軽快そのものです。撮ろうとする光景に出会うと、露出や構図を変えて数枚ずつ撮影しながら散策しました。XF23mmには円形フードが標準装備されているのですが、カメラを構えた際の安定性アップに一役買っています。親指と中指で絞りリングを支えると、人差し指はフードの装着部に自然と添えることができました。これが実撮影ではかなり助かりまして、しっかりとカメラを持って撮影することができました。フードの装着は必ず行いたいものです。絞りリングのクリック感も良かったのですが、急いで動かすとカメラのファインダー情報に反映されるのがやや遅れます。AF使用のストレスは感じませんでした。
もともと色調や画質に定評のあるFUJIFILMですが、もちろんこのXF23mmも例外ではなく、「フジの写り」を体験することができます。ただ、これは以前に「本日のフジヤ」で担当:Kが書いていましたが、最短撮影距離(22cm)付近で開放にて撮影すると、柔らかい雰囲気になると感じました。被写体にもよりますが、ややソフトな表現をしたい時など、力になりそうです。この自然教育園は、子供の頃何度か連れてきてもらった場所です。訪問するのはかなり久々だったのですが、いまだにエピソードを覚えている場所もあり、とても楽しめました。軽いというのはそれだけで余裕が生まれます。FUJIFILMには同じ23mmでF1.4も用意されていますが、このF2で十分だと感じます。そして、X-T2のレスポンスの良さは想像以上でした。
■撮影場所
国立科学博物館附属 自然教育園
http://www.ins.kahaku.go.jp/index.php(2016年12月7日取材)
※撮影はすべてJpeg、手持ちで行っています。フィルムシミュレーションはVelviaに設定。
Photo & Text by 高山景司
>>> FUJIFILM (富士フイルム) フジノンレンズ XF23mmF2 R WR