発売された10月、「本日のフジヤ」でも紹介されたシグマ12-24mm F4 DG HSM | ART。ちょっと遅くなってしまいましたが、ようやく試すことができました。超広角ズームの先駆的存在ともいえる初代モデルが発売されたのは2003年のこと。2011年にはその改良型である、12-24mm F4.5-5.6 II DG HSMにチェンジされました。それから5年が経過して、3代目となる今回の12-24mm F4 DG HSM | ARTがいよいよ登場。描写性能と使いやすさが向上したというこの「3代目」はどんなパフォーマンスを見せてくれるでしょうか。ワクワクします。
先入観なしにこのレンズを見たとき、最初に思ったのは「でっけえなぁ ! ! 」でした。特徴的な前玉がとにかく目立ちます。「大きい」ではなく、「でかい」だったのです。迫力満点、まさに重厚感ある外観はそれだけで圧倒されます。レンズ構成は11群16枚、重さは1,150gもありますから、これはきっと重たいだろうと考えていました。ところが、テスト機として使用したキヤノンEOS 5D Mark IIIに装着してみたら、意外なほどバランスが良くてビックリ。重量感はありますが、使いやすそうです。今回は東京都立水元公園(葛飾区)に出かけてきました。
雨が上がって晴れ間が広がった園内。東京都とは思えない風景です。メタセコイアが色付いて、レンガ色の木々が並んでいます。空には鳥が舞いました。SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | ARTの最前面レンズには、大口径80mmの非球面レンズが採用されています、これによって、周囲の歪みや球面収差、コマ収差が抑えられています。清々しいシーンを見ることができました。
こういう枝がたくさんあるシーンを見ると、ついつい撮影したくなります。周囲の木々にはまだ葉がたくさん残っているのに、この木は落ちている。その対比に面白さを感じました。12-24mmというと焦点距離上は12mmしか変化がありませんが、画角では38度も変わります。ファインダーを覗きながら画角を確認し、構図を決めます。この考える時間がとても楽しく感じます。
ここは水生植物のエリアです。こちらの紅葉は見事でした。堂々と佇むレンガ色の木々が、水面にも映り込んでいます。陽が雲に隠れてしまった時間帯での撮影でしたが、コントラストがハッキリしていて、どんよりした印象がありません。色も良く出ていました。高水準の描写性能が自慢の、シグマArtラインならでは、ですね。画面中央の東屋の後ろには、望遠レンズを構えている方が複数いらっしゃいました。水元公園は、野鳥の撮影地としても知られている公園です。
上に載せた写真の中心にある、紅い木を逆光側から撮影しました。2つの木を真ん中に配して、周囲に紅い葉を散りばめています。画面中央にも紅い葉と木を置いたので、他の空間があまり目立たくなりました。よく見ると、2つの大きな木は揃って同じような形をしていますね。12-24mmには非球面レンズのほかに、色の滲みを補正するFLD(F Low Dispersion)ガラスも採用されています。これにより、逆光時の撮影でもコントラストの高い描写を可能にしています。
メインの道からちょっと逸れると、このような場所があります。落ち葉が地面をいっぱいに覆っていました。まるで葉っぱの海ですね。これを手前からワイドに、敷き詰められているように見せたかったので、12mm側にして撮影しました。陽がなく暗かったので、ISO感度は1600に上げています。落ち葉と背景の緑のコントラストがしっかり出ました。とても頼れるレンズです。
定番の構図、大きなメタセコイアの木々を下から撮影しています。これも陽が当たっていないタイミングでの撮影ですが、コントラストの高い描写のおかげで雰囲気が出ました。紅葉の撮影は晴れがベストですが、描写のよいレンズを使えば天候に左右されることも減ります。紅い葉に混じって細い枝がたくさんありますね。真っすぐ伸びる木と合わせると、あみだくじのようです。
そろそろ帰ろうかと思ってのんびり歩いていたら、西陽が差し込んできました。雨が降っていて、天気予報が曇りだったにも関わらず、ここにやってきた目的がこれでした。昼間とは全く異なる風景がそこには広がっており、落ち葉にも輝きが宿りました。木の向こうに見える紅葉と落ち葉のコントラストが面白くて、しばらくそこに佇んでシャッターを押していました。秋の彩りですね。
ふと通り過ぎようとして見上げたら、葉に西陽が当たっているのを発見。ぐるっと半周回って光が最も当たっている角度を探し、背景にも紅葉を選んで撮影したカットです。手前の葉はハッキリと、でも背景は柔らかめ。この描写がこのときのイメージにピッタリでした。撮影に来た甲斐がありましたが、実はこの時、バッテリー表示が点滅(容量不足の警告)していました。予備を持ってくるのを忘れたのです。ヒヤヒヤしながら、なんとか撮ることができました。よかった。
カメラとレンズをバッグにしまって帰り道を歩いていたところ、一面がレンガ色になっているエリアを発見、この色を撮りたいと思い、再びカメラとレンズをセットして撮影しました。大きな落ち葉を中心にしています。広角の14mmとはいえ、開放にするとボケは作れます。EOS 5D Mark IIIはモニターが動かないので、ローアングルの撮影はけっこう恥ずかしいものがありました。12-24mmの最短撮影距離は24cm(24mm時)。けっこう近寄れるので、助かります。
EOS 5D Mark IIIに装着したところ。前玉がとてつもなく大きいです。当然レンズキャップも大きくなります。内部のパーツにも金属などを使用し、精度を高めています。レンズ鏡筒に発売された年が刻印されているのはユニークな特徴。テストレンズには「016」と印がありました。
最前面のレンズがとても大きいので、鏡筒は途中の窪みから少し細くなります。これが実に、手に馴染むんですね。窪んでいるところに中指の付け根がちょうど当たるので、アシストの役割を果たしてくれます。親指と薬指でズーミングする際、しっかりと固定されるのでホールディングを安定させることができました。12mmから24mmまでは、概ねズームリング2.5回の操作で到達しました。SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | ARTを使用していて最も楽しかったのは、「ここいいかも ! 」というシーンを見つけてファインダーを覗いた瞬間です。予想より広い範囲が入っているのにビックリするとともに、そのワイド感がとても面白く感じられたのです。
やや重めのズーリングを回すと、激的に世界が変わります。新設計という大型のHSMは特に大きく迷うこともなく、安心して作動させることができました。狙ったところに「ピシッ」と正確なピント合わせができますし、大きいレンズではありますが、作画に集中することができました。描写はとても気持ちいいです。周辺の歪みもなく、どんなシーンでも気にせず構図を作ることができました。フードはそれなりの長さを確保されてはいますが、12mmの位置では前面に繰り出されますので、撮影時には注意したいです。重いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、それを補ってあまりある性能の良さ、所有する誇りを得られる1本でしょう。
■撮影場所
東京都立水元公園
https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index041.html
(2016年12月1日取材)
※撮影はすべてJpeg、手持ちで行っています。ピクチャースタイルは風景に設定。
Photo & Text by 高山景司
>>> SIGMA (シグマ) 12-24mm F4 DG HSM | ART