フジヤカメラ

 

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2016.12.07
専門店・プロレビュー,

スタッフ高山のオレに試させろっ! 第40回「KenkoTokina (ケンコー・トキナー) Tokina AT-X 107 DX Fisheye」 編

トキナーレンズテスト
f7.1 AE(1/50) ±0 AWB ISO320 焦点距離 13mm
中野区立平和の森公園は、中野刑務所跡地に開設された公園です。発掘調査の結果、弥生時代や縄文時代、古墳時代の住居址や多数の土器が出現しました。それもあってか、園内に入るとまず目にするのがこの「弥生時代後期 復元住居」です。さほど広くないスペースに設置してあり、10-17mmクラスでないと、周囲の木々と一緒にフレームに入れるのは難しいです。写真を見ていると、どことなくSF的なイメージが湧いてきます。周辺に僅かなフリンジが見られます。

 

え、トキナー10-17mm ? と思った方もいらっしゃるかもしれませんね。このレンズの発売は2006年9月ですから、今年で丸10年が経過しました。それだけ息の長いロングセラーとしてラインアップに加わっているわけですね。なぜこれを取り上げることにしたのか。その答えはフジヤカメラ店のイベントにありました。去る11月26日のことですが、本店正面にあるイベントスペースで「トキナーレンズを試そう ! 」というイベントが開催されました。現行のトキナーレンズがほぼ勢揃い、それを2時間自由に使えるという内容です。「試そう ! 」といえば「オレため」なわけですよ。たまたまこの日は休みだったので、喜んで参加させてもらいました。

 

トキナーレンズは以前にも何度か試していますが、当日使えるレンズで最も興味深かったのは、10-17mmF3.5-4.5でした。そう、フィッシュアイズーム。なんとも楽しそうですね。実を言うと、かなり前に所有していたことがあります。風景撮影の際などに活躍してくれたのですが、システム変更のために手放してしまいました。それもあり、懐かしさと面白さを再び体験してみたかったのです。手続きをして、早速借り出しました。ボディは愛機のキヤノンEOS7Dです。このレンズはDXタイプですから、APS-Cサイズのセンサーを搭載しているカメラでないと対応しません。バッグに入れて、フジヤカメラ店から徒歩25分ほどのところにある「中野区立平和の森公園」に向かいました。制限時間は2時間ですが、往復の時間で約50分かかるので、撮影は1時間ほどでした。短い時間でしたが、とても楽しく使うことができましたよ。

 

f8 AE(1/50) -1.3 AWB ISO320 焦点距離 10mm

 

大きな木の根元を、大型動物の足元に見立てました。撮影時焦点距離は広角端の10mmです。EOS7DはAPS-Cセンサーなので、135mm換算では16mm。対角線画角は162度になります。(ニコンAPS-Cセンサーでは180度です。) この画角で寄ると被写体を変形させることができるので、通常の撮影とは違う表現を楽しめます。モノトーンで統一された画面に彩りを加えるために、緑の葉を画面に配置しました。なにげない風景を、違う印象に変えることができますね。

 

f8 AE(1/125)-1.3 AWB ISO320 焦点距離 15mm

 

135mm換算24mでの撮影。F8くらいまで絞ると、画質も安定してきます。中央の緑の葉などはシャープに解像しました。多少古い世代に位置されるレンズですが、周辺の光量落ちも目立つほどではありません。シャープすぎず柔らかすぎず、というところでしょうか。池に映り込んだ木々、赤い葉、差し込んだ柔らかい光。これらがなかなか幻想的なムードを醸し出してくれます。

 

f11 AE(1/125) -0.3 AWB ISO320 焦点距離 14mm

 

立ち並んでいる木々の、くねくねと伸びている枝がとても面白いと思いました。地面は緑が目立っていたので、画面に入れるとこちらのコントラストのほうが高くなります。従って、なるべく入れないようにカットしました。135mm換算は22mm。このあたりになると、通常の超広角レンズとして楽しむこともできます。レンズ構成は8群10枚。そうは思えないほど軽いです。

 

f5.6 AE(1/60) -1 AWB ISO320 焦点距離 14mm

 

秋の公園ではほぼ間違いなく撮れるこのシーン。定番ショットといえます。色とりどりの落ち葉のなかで、目立っていたのはもちろん紅い葉でした。これを主題にして、周囲にはたくさんの落ち葉を散りばめました。絞りを5.6にしたのは、周囲もそれなりにハッキリ見せたい、でも紅い葉を一番目立たせたい、そういう考えからです。後ろには木をたくさん並べました。10-17mmの描写では、この5.6のものが最も好みです。色のメリハリがハッキリしていてGood ! でした。

 

f4 AE(1/1000) +0.3 AWB ISO320 焦点距離 12mm

 

これを見つけた時、単純に「面白い ! 」と思いました。大きな緑の葉にシルエットで写っているものの姿を即座に連想したからです。それは、カマキリでした。最初は横位置でいろいろ撮影していましたが、どうもしっくり来ない。そこで、「ヨコでダメならタテにしな」とばかりに縦位置で狙ってみたカットです。これ、かなり寄って撮っています。10-17mmは、レンズ先端部から約2.5cmまで被写体に接近できます。ただし、フードはとても短いので注意しましょう。

 

f6.3 AE(1/400) -0.3 AWB ISO320 焦点距離 16mm

 

撮影した当初、このカットは載せないつもりでした。歩いているときにふと撮影した、それだけだったからです。2コマ撮影して、手応えがないのでその場を離れました。ところが、パソコンで確認したら妙に印象的だったので、大逆転でご覧いただくことになりました。余計なものがたくさん写り込んでいますが、秋っぽく暖かな色合いが目に優しい、それが理由かもしれません。

 

f 8 AE(1/200) ±0 AWB ISO200 焦点距離 10mm

 

広角端で、見上げるような構図で撮影。奥の紅葉はまだ葉が落ちておらず、それを手前の木がなんとなく嫉妬しているような、そんなイメージで撮っています。手前の木はとても立派な枝ぶりですね。葉はまだ少し残ってはいるのだけど、それだけに落ちてしまったあとの寂しさが漂っているように感じました。まあ実際はそんなことはないでしょうけど。その場の風景を見て、何かに見立てるとか勝手に想像を膨らませるとか、そういうところから撮影することがあります。

 
f8 AE(1/200) -0.6 AWB ISO200 焦点距離 13mm
 

135mm換算21mmでの撮影。中央に休憩場所を置いて、左右を木々で覆いました。右側の紅葉はもう見頃を過ぎたかな ? という状況でしたが、遠距離から撮影すればそれほど目立ちません。ケンコートキナーさんのHPには、「10-17mmをキヤノン(APS-C)デジタルカメラで使用する際、手動でピント合わせをする場合には必ず切り替えスイッチを「M」に合わせて下さい。」という記載がありました。「AF」にしたままでフォーカスリングを動かすと、レンズ内部のギアに負担がかかり故障の原因になるそうです。はっきり記載があるので、意外と多いトラブルかもしれません。

 

f22 AE(1/60) ±0 AWB ISO500 焦点距離 12mm

 

逆光、絞り22での撮影です。大小さまざまな紅葉を、画面いっぱいの構図にしました。光芒を大きくするとそちらが目立ってしまうので、画面右端に小さく作っています。今年は例年より多く紅葉を見に行きましたが、天気の関係もあり、今回が最も鮮やかでした。10-17mmフィッシュアイにはフィルターの装着ができません。その代わりに、レンズ前面には撥水性・撥油性に優れたWR(Water-repellent)コートを採用しました。指紋などの拭き取りが簡単に行えます。

 

EOS7Dに装着して撮影。ズームリングの目盛りは10、12、13、14、15、17の6つでした。久々のトキナー10-17mm。2時間だけの付き合いでしたが、とても楽しく撮影できました。ありがとうございました ! !

 

10-17mmフィッシュアイは、全長が71.1mm、重さ350g。とてもコンパクトなレンズです。持って歩いても、苦には全くなりません。ファインダーを覗くと、肉眼で見ているよりも遙かに広い画角なので、それだけでも面白さを感じます。AFの速度を競うレンズではないので、速さは標準的です。作動音もそれなりに発生するので、撮影状況によっては気になることもあるでしょう。最新レンズの軽やかな動作と比べてしまうのは酷というものです。構図を決める際には、けっこう気を使いました。画面の周囲を見渡して、余計なものが入らないかどうかを確認する必要があります。また、同じ場所で画角を何度か変えて、最終的に撮影する構図を決定する、という撮り方が多かったように思います。「カッチリ写る高解像のレンズ」というわけではありませんが、実用上は全く問題ないし、いつもはできない画面構成を作ることができるという点で、撮影の自由度、表現力を大いに高めてくれる1本だと思います。今回のように自分のカメラで試せるというのはそうそう多くありません。貴重な機会に、感謝したいです。

 

■撮影場所

中野区立平和の森公園

(2016年11月26日取材)

※撮影はすべてJpeg、手持ちで行っています。ピクチャースタイルは風景に設定。
Photo & Text by 高山景司

 

>>> KenkoTokina (ケンコー・トキナー) Tokina AT-X 107 DX Fisheye


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