今回は、休みを利用して熱海の街へ、古い街並みが残る糸川と渚町を中心にスナップしてきました。独特の雰囲気に魅了されて、街に足を運びました。気がつくと、有名な観光名所には全く行かずに街の建物ばかりを撮っていました。
1990年以降、ライカ社は広角レンズのモデルチェンジを精力的に行い、次々とアスフェリカル(非球面)レンズを採用します。
そんな中、1993年より生産されたエルマリート M 28mm F2.8 第4世代はアスフェリカルを採用していません。2006年、第5世代でようやく非球面レンズが採用されますが、第4世代はそれだけ高性能なレンズだった、と言うことではないでしょうか。
カウンターに座り正面を見ると、50年以上前から変わらない丸いガラス棚があります。レンズを通しても、美しく並べられたボトルやグラス類が見たままの美しさで記録されて驚きました。
熱海の駅は複雑な地形の急斜面にあり、海岸からは斜面を登る場所にあります。水平を取ってもこれだけ斜面を感じます。感覚的には平均勾配は7%くらいでしょうか?直線的な建物が多いですが歪みは感じません。
夕暮れの熱海海岸は優しい波の音がリラックスさせてくれます。観光地たる所以でもあるのでしょうね。夕焼けの微妙な色合いも美しく表現されています。
熱海の宿泊施設にも明かりが灯って夜の装いです。海の反射、空のグラデーションも繊細に表現してくれます。少し周辺の落ちが見られます。
夜の海岸からは熱海城がライトアップされていました。カラフルな水面反射が印象的でした。点光源に対してのコマ収差もあまり感じられません。
糸川附近のお宅。元魚屋さんだったのでしょうか。ツタやバイクと建物に惹かれました。錆の色やオシロイバナの色合いも忠実です。
渋い街並みです。看板建築の角のお宅は、現在営業していないものの、ドッシリとした存在感があります。独特な張られ方の電線も、一本一本描写しています。
トマソンと呼んでも良いのでしょうか?トタンに覆われる前はドアーや窓があったのでしょうか。配管らしきものも、今ではトマソンとなり当時どのように使われたか今では難しくさせています。滑らかな影や一輪車の青も渋く写し出してくれました。
熱海の坂を上っていると、階段のある建物が多く目につきます。ふと見ると、ハトのひな壇が。一番上のハトが、まるで王様のようです。暗がりでも階調が出ています。
撮影は、SONY α7にフォクトレンダーのクローズフォーカスアダプターを使用しました。エルマリート M 28mmは、ライカの中では標準的なサイズですが、プラスチックの角フードが厚めで少し無骨に感じます。前玉は平らに見えますが、実は凹面レンズになっていて、7群8枚のレトロフォーカスを改良した設計。
ライカのレンズに対して、コントラストが比較的低く、柔らかい、というイメージがあったので、いざ使ってみると想像とは全く違った描写に驚きました。破綻という破綻がなく、電線や点光源にもパープルフリンジは出ていないようです。特に絞り込んだときの色表現性と、繊細な描写のバランスは素晴らしいの一言につきます。α7で撮影する場合、コントラストが高いので、硬質なもの、例えば岩肌や金属質な物の表現、建物、ビルディング等を撮るのに向いていると思います。
Photo & Text by フジヤカメラ店スタッフ 久保田
Leica ELMARIT-M 28mm F2.8 4th version
1993年発売
レンズ構成:7群8枚
最短撮影距離:0.7m
フィルター径:46mm
撮影で使用したレンズ: ABランク 115,560円
中古の見つけやすさ:☆☆