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2019.12.25
未知とのso good,

中古カメラ渇望記 または私は如何にして心配するのを止めて中古カメラを愛するようになったか

中古カメラ渇望記 または私は如何にして心配するのを止めて中古カメラを愛するようになったか
第1回 PEN-Fと云うカメラ

 

井の頭公園

 

安部公房の箱男を読んだ。
ぼく、がアパートから開放されダンボールに棲みつく流れは毎回だけど冷静には読めない面白さ。どこかに大きめのダンボールさえあればと、つい好奇心がうずいてしまう。
街中に潜み箱の内側から世界を見るというその行為がとてつもなく魅力的に思えるのは、いつのまにか文章に惹き込まれているからだけなのだろうか? それとも。

 

兎角、人というのは如何なるときにも好奇心に支配されているもの。

 

オリンパスのデジタルカメラPEN-FにフィルムカメラPEN-Fのレンズをつけてみたい。
まるで出オチだがこれも好奇心。
そもデジカメPEN-Fを所有しているユーザーであれば一度は考えてみるのではないだろうか。
ところがこの企みはなかなかに困難であることにすぐ気づかされる。
デジカメPEN-Fは生産完了品とはいえ中古での流通はある。
問題はフィルムカメラPEN-F用交換レンズだ。

 

新宿の街

 

にわとり

 

井の頭公園2

 

球体

 

森

 

そもフィルムカメラPEN-Fが世に登場したのは1963年。
ポロプリズムファインダー。シャッター幕にチタンを用いたロータリーシャッター。豊富な交換レンズ。公式HPの解説には、「高速化と耐久性を両立させたロータリーシャッターは、技術者たちの多大な努力と苦心で完成した」と記述されている。
なお当時の価格は26,500円(38mm F1.8付き)。
ん?これは今の物価に換算すると、、、無粋なことは考えないことにしておこう。
かように発売から50余年を経ているため程度のいい中古の流通量は決して潤沢とは言えない。つまるところ折角出オチを思いついたとしても実行に移せないのが現実だ。

 

ところがとある日ショーケースにレンズが鎮座していた。
まさにPEN-F用交換レンズだ。
Olympus E.Zuiko Auto-W 1:4 f=25mm
Fロゴが冠された金属キャップとシェードも付属している。
これは絶好の機会。出オチ、いや好奇心を実行にうつすべきだろう。
マウントアダプターを介して早速レンズを装着をしてみれば実にしっくりと収まった。
レンズの焦点距離は25mm。マイクロフォーサーズのセンサーでは焦点距離50mmに換算され、所謂標準レンズとなる。これは使い勝手も悪くない。
なによりボディとカメラの相性がいい。
このために50余年を経たのではないかと思えるというのは言いすぎだろうか。
手に収まるボディのサイズとクラシカルな外観。操作ダイアルやファインダー位置もバルナックカメラを手にしているよう。

 

背面の液晶画面を畳んでしまえば、レンズと相まってこれがデジカメであるということを一瞬忘れさせる外観。
これで写真を撮りたい、という欲望が湧いてくる。
だが同時にこの組み合わせが自分のものでないという現実に歯がゆさ。

 

ともかく撮影に持ち出してみる。

 

遊具

 

シャッター富士

 

看板

 

影

 

ドーナツ!

 

それこそ箱男のように
"つづけさまに三回シャッターを切った
250分の1秒、F11にセット"
などという緊張感も良いのだが、今回はのんびり撮影と決め吉祥寺駅から公園をぶらぶらと散策することにした。
コンパクトなボディと50mmの画角という組合せなので負担も気負いもなくスナップが愉しめる。
開放F値は4とおせじにも明るいレンズとは言えないが、電子ビューファインダーを通しての撮影なので別段気にならない。これはデジカメならではの恩恵というところだろう。

 

ところで人間の脳内補完は面白いもので、なかでも定番は古い時代の表現だ。
今も昔も木々の緑や空の蒼さは不変であり、街は極彩色に溢れている。デジタルでもフィルムでも再現性こそ差があれど同様に記録し再現しているはずなのだが、人は記憶を希望によって変換して補完してしまう傾向があるようだ。昭和の時代などは退色したカラーかモノクロームの美しい風景に収まってこそリアルと感じるのは摩訶不思議。
なればと今回は悪ノリでデジタルPEN-Fのモノクロプロファイル撮影も試みた。

 

さてレンズについても一言。
50余年前のオールドレンズらしい描写で、当たり前だが現代レンズのようなカリっとした描写は期待できない。
条件によってはゴーストやフレアも盛大に描写する。
では単純に駄目なのかといえばそんなことはない。
カメラによる補正の恩恵もあるのだろうが遜色のない、それでいて独特な雰囲気を描き出してくれた。
おかしな話だが、もっと破綻しても面白かったなどと頭の隅で考えてしまった。

 

さてPEN-FにPEN-Fという出オチを一日愉しんでみて、ふつふつと物欲が脳内にうずまいてきた。
標準レンズ画角と手に収まるサイズ。カラープロファイルのような悪戯に手を染めることもできる多様性。
ファインダーを覗き、ピントリングを回すという所作の愉しみ。

 

そんなことをぼんやり考えながら撮影画像を確認していると水槽の中から魚がこちらを覗いていた。

 

こちらを見る魚

 

見ることが見られることに変化する。
箱男の作中で繰り返し展開される状況だ。
ふとそんなことを考えてしまった自分に苦笑。

 

次の休日。もし同じ機材を使える機会があれば今度は街を撮ってみよう。
どこかに箱男がひそんでいるやもしれぬ。

 

 


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